いつかの月が君に微笑む
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5:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 21:57:16.93 ID:3RPf7FsGO
本当の意味で何も無いこの島に来る人なんて年に一人いるかいないかで、基本的に船に乗るのは島外で働く人たちか、家族を島に残した人たちくらいだ。純粋な島外民を対象に
するのであれば、民泊はあってもなくても変わらない。それでも唯一生き残っていた民泊も、経営していたうちのばあちゃんが一昨年に亡くなった。

昨年は誰も観光客が来なかった(俺が知らなかっただけかもしれないが)から関係はなかったけど、お客さんがもし来ればうちで預かろうというのがルールになっていた。

「えーと、お姉さん……みたいな島外のお客さんって、珍しいから」

お姉さん、と呼んだところで彼女の名前もまだ知らなかったことに気がついた。それが表情に出てしまったのか、微妙な間で察したのか、彼女は口を開いた。

「そういえば、自己紹介がまだだったよね。私は瑞穂、尾関瑞穂。あなたは?」

「和樹です。新家和樹、今年で高二」

「オッケー、カズくんね」
いつも同級生に呼ばれているのと同じ名前でも、彼女に呼ばれると少し鼓動が速くなってしまうのは男の性と言うべきか。彼女の甘い香りが夜風でたまに運ばれてくると、それだけで陶酔してしまう。都会の香りというか、この島にはない、人工的なそれに気持ちが高揚する。


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