いつかの月が君に微笑む
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4:名無しNIPPER[saga]
2019/08/14(水) 21:55:45.29 ID:3RPf7FsGO
「私を幽霊と勘違いした?」

事情を説明すると、彼女は笑い飛ばした。あははは、とこれまた大きな声だった。
どうやら彼女は幽霊ではなく、島外から来た人らしい。俺が心霊現象だと勘違いした光は、スマホの光だったようだ。

「電波も入らないのにスマホ見てたんですか?」

「うん、ちょっとね。あと、敬語はいらないからため口で」

並んで歩く彼女の横顔は、最初の印象から変わらず……いや、目が暗さに慣れるつれて、より一層美人に思えた。そのせいか、緊張でつい敬語が出てしまう。

「善処しま……する」

「よろしい」

楽しそうに笑う彼女は、顔の作りは大人びた美人でも、所作は同世代のものに思えた。

女性に年齢を聞くのは失礼だということくらいは知識として知っているが、大きく年が離れているわけではないのかもしれない。

「助かったわ。ホテルは無くても民宿くらいは見つかるかなって思ってたんだけど」

今日の夕方の便で岸辺島に渡って来た彼女は、宿泊地を探して島内をうろついていたらしい。しかし、それらしき看板も見当たらず、着いたのが夕方だったせいで島民とも遭遇できず、どうしたものかと悩んだ結果が堤防で夜を明かすつもりだったということだ。

「一昨年で最後の民泊が潰れましたしね」

言った後に敬語になってしまったことに気がついたが、彼女も特に指摘はしてこなかった。徐々に慣れればいいと言外に示しているのだろうか。


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