ドラゴン「貴様は肉を食わないのだな」魔物使い「ベジタリアンなものでして」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:34:41.97 ID:otgDpFYUO
鬱蒼と木々が生い茂る広大な森の奥深くで食料を探していたら、古びた洞窟を見つけた。
丁度、雨が降っていたので、これ幸いと雨宿りをするべく、その洞窟の中へと駆け込んだ。
すると、中からは何やら生き物の気配がした。

それは匂いであったり。
荒々しい息遣いであったり。
肌を焦がす熱気であった。

そしてそれら全てが、たまらなく怖かった。
危険を感じてすぐさま引き返そうとすると、洞窟の奥から地鳴りのような声が響いた。

「ここへ何をしに来た、人間」

人間とは、恐らく己のことだと推察する。
少なくとも、己以外の人間の姿は見えない。
この広大な森で暮らす人間は、己だけだ。
だから人間は自らの目的を、正直に話した。

「えっと……その、雨宿りしようと思いまして」
「嘘をつくな。財宝が目当てであろう」
「そ、そんな、めっそうもありません!」
「まあ、ここに財宝などありはしないがな」

身に覚えのない疑いを向けられ、青ざめた人間に対して、洞窟の奥から響く声の主はまるでその反応を楽しむかのように、嘲笑った。
そんな人を馬鹿にした態度に人間は憤りを覚えて、何か言い返すべきか、でもやっぱり怖いからやめておくべきか迷い、悩んでいると。

「雨宿りならば、奥でするがよい」
「えっ?」
「聞こえなかったのか? 近う寄れ」
「あ、はい」

近う寄れだなんて、まるでどこぞの王様みたいだなと思いながら、人間はその言葉に従った。
そして洞窟の最奥に悠然と横たわる、巨大なドラゴンの姿を見て、なるほどこれはたしかに王者の風格だと思い納得して、小便を漏らした。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:37:47.02 ID:otgDpFYUO
「……度し難い。よもや他所様の寝床に来るなり小便を漏らすなど、夢にも思わなかったぞ」
「ご、ごごご、ごめんなさぁい!?」

失禁した人間を、ドラゴンは咎めた。当然だ。
誰だって、たとえドラゴンだって怒るだろう。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage sagd]
2019/07/16(火) 21:41:45.94 ID:otgDpFYUO
「ドラゴンさん」
「なんだ?」
「すっぽんぽんになりました!」
「わざわざ言わなくていい」

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:43:29.66 ID:otgDpFYUO
「貴様は森で暮らしているのか?」
「あ、はい。独りで森に住んでます」
「何故、独りで森に住んでおるのだ?」
「いやー、実は人間の国から追放されまして」

以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:47:14.99 ID:otgDpFYUO
「貴様は、狂っている」
「やっぱりそう思います?」
「ああ。だがしかし、それも貴様の自由だ」

ドラゴンは人間を愛さない。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:51:02.61 ID:otgDpFYUO
「道理だな。たしかに食欲は唆られん」
「はっきり言わないでくださいよぅ」

しかしドラゴンは疑問に思う。では何故、と。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:54:10.15 ID:otgDpFYUO
「というわけで」
「どういうわけだ?」
「今日からあなたはご主人様ですので」
「ご、ご主人様……?」
「なんなりと、お命じください!」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:56:00.83 ID:otgDpFYUO
「もう目を開けてもいいですよ」

再び、洞窟内に衣擦れの音がこだまして。
ようやく全裸の人間は衣服を着直したらしい。
とはいえ、ドラゴンの鼻はその嘘を見破った。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:58:52.62 ID:otgDpFYUO
「待たせたな」
「あ、おかえりなさい。ドラゴンさ……」

しばらくして、ドラゴンは洞窟に戻ってきた。
大きな顎門に咥えた魔物の死骸を携えて。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:02:13.69 ID:otgDpFYUO
「魔物の肉を食え。貴様の飼っていた魔物と同じように。生きる為に、食え! 食うのだ!!」
「やだ、やだよ……できない。できないよぉ!」

現実を突きつけても尚、人間は拒んだ。
酷く醜く、そして美しいとドラゴンは思う。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:05:05.30 ID:otgDpFYUO
「焼けたぞ」
「焼けましたね」
「美味そうだろう?」
「全然、美味しそうじゃありません」

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:07:23.49 ID:otgDpFYUO
「こんなに満腹なのは久しぶりです」
「そうか」
「ドラゴンさんも満腹ですか?」
「腹八分目だ」
「大食いなんですね」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:09:22.00 ID:otgDpFYUO
「おい、貴様……何をするつもりだ?」
「ちょっとお花を摘みに」
「この洞窟に花など咲いてはおらん」
「ならば! ドカンと! 咲かせてみましょう!」
「咲かせなくていい」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:12:07.97 ID:otgDpFYUO
「というわけで、ご主人様」
「何を言うつもりなのか、わかっているぞ」
「排泄の処理を……」
「するわけなかろう!」
「ひぇっ」
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:14:34.89 ID:otgDpFYUO
「おやおや〜? もうドラゴンさんったら……」
「よ、寄るな、人間!」
「腹八分目の癖にもう出しちゃうんですか?」
「う、うるさい! 今のは何かの間違いだ!」
「いいえ、必然ですよ。生きている限りその宿命からは逃れることは出来ません。本能です」
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 22:16:35.76 ID:otgDpFYUO
「寝床を汚して、ごめんなさい」
「よい。実に愉快であった」

しばらく互いに悦に浸った後、正気を取り戻した人間はドラゴンに深々と頭を下げ謝罪した。
それに対して鷹揚に応え、赦しを与えると。
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage]
2019/07/17(水) 00:31:41.97 ID:HU48+kZh0
            , ‐ ' "´ ̄ ̄ ̄ 丶、
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以下略 AAS



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