ドラゴン「貴様は肉を食わないのだな」魔物使い「ベジタリアンなものでして」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:47:14.99 ID:otgDpFYUO
「貴様は、狂っている」
「やっぱりそう思います?」
「ああ。だがしかし、それも貴様の自由だ」

ドラゴンは人間を愛さない。
むしろ、憎んでさえいる。
故に人外を愛する人間を狂っていると称した。
それでも、それを咎めることはない。

ドラゴンもかつて人間に愛された経験がある。
遠い遠いその昔の日々は、そう悪くなかった。
ドラゴンもまた、その人間を愛していた。
しかしその両者を引き裂いたのは人間だった。

故にドラゴンはもう、人間を愛さない。

「あなたも、涙を流すんですね」
「……お前まで、泣く必要はなかろう」
「あなたの悲しみが、よくわかるもので」

立場が違うだけで、境遇は似ていた。
人間はかつて、魔物使いを生業としていた。
それは珍しくはあっても、歴とした職業だ。
だが、この人間は常軌を逸していた。
魔物使いとは魔物で魔物を狩る職業である。
魔物同士を戦わせて、獲物を捕らえる。
そんな当たり前のことをこの人間は放棄した。

ただひたすらに、魔物を愛し、そして愛でた。
戦わせるなんて以ての外。大事に育てた。
魔物の食費の為に飲食店に勤めて皿洗いなどの下働きをする魔物使いなど、他に居なかった。

故に、周囲に気味悪がれて、迫害された。
様々な町や国を渡り歩いて、旅を続けた。
それでも結局、この人間の居場所はなかった。
共に暮らしていた魔物達を取り上げられて。
絶望に打ちひしがれた人間は、森へと入った。

「だからこの森が、最後の楽園なんです」
「しかし、森での暮らしは過酷だろう」
「いえいえとんでもありません! 天国です!」
「魔物に食われ、本当に天国へいくつもりか」
「それが本望ですけど……上手くいかなくて」

この森の中でその生涯を終えるつもりだった。
しかし、しぶとく生き残ってしまった。
人外を愛する人間を不気味に思うのはなにも他の人間だけでなく、森に生息する凶暴な魔物達もまた、この人間を気味悪がり食わなかった。


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