ドラゴン「貴様は肉を食わないのだな」魔物使い「ベジタリアンなものでして」
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8:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:56:00.83 ID:otgDpFYUO
「もう目を開けてもいいですよ」

再び、洞窟内に衣擦れの音がこだまして。
ようやく全裸の人間は衣服を着直したらしい。
とはいえ、ドラゴンの鼻はその嘘を見破った。

「まだメス臭いぞ。下を穿け」
「あちゃ〜バレバレですか」
「当たり前だ」

観念したように下着を穿く人間に呆れつつ、ドラゴンはようやく眼を見開いた。
服を着た人間の姿を一瞥して、違和感を抱く。

「む? 貴様……」
「ほえ? どうしました?」
「上着を脱いでみろ」
「やっぱり裸が見たいんじゃないですか!」
「見せるのは腹だけでよい」

裸体に興味があるわけではないことを言い聞かせると、人間は気まずそうに目を泳がせた。

「どうした? 早くしろ」
「……見せたくない、です」
「だろうな。そんなガリガリの腹ではな」

初めは雨に濡れたせいで痩せて見えるのかと思ったが、乾いた衣服の上からもよくわかる。

「貴様、いつから食事をしていない?」
「さあ……自分でもよくわかりません」

人間は、この上なく、飢えていた。
乾いた服の上からもわかるほど、ガリガリに。
どうしてそうなったのかは、明白だ。

「貴様は肉を食わないのだな」
「ベジタリアンなものでして」

この人間は肉を口しないらしい。
恐らく、その悪癖が原因だろう。
人外を愛する人間は、魔物の肉を食べない。
ならば野草や果実を食べようにも、この深き森で無害なものを見分けるのは困難を極める。
今の季節は多少の無害な植物は存在している。
しかしこの様子では、魔物に食われるよりも早く冬が訪れ、餓死することは目に見えていた。

「少しの間、ここで待っていろ」
「えっ? あ、ちょっと!?」

短くそう告げてドラゴンは洞窟を出ていった。


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