ドラゴン「貴様は肉を食わないのだな」魔物使い「ベジタリアンなものでして」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2019/07/16(火) 21:58:52.62 ID:otgDpFYUO
「待たせたな」
「あ、おかえりなさい。ドラゴンさ……」

しばらくして、ドラゴンは洞窟に戻ってきた。
大きな顎門に咥えた魔物の死骸を携えて。
絶句する人間の前に置いて、主人は命じた。

「食え」
「……食べたく、ありません」
「いいから、食うのだ」
「食べたくない!」

かぶりを振って頑なに魔物の肉を口にすることを拒む人間に対して、ドラゴンは冷酷とも取れる口調で淡々と現実を告げた。

「食わねば死ぬぞ」
「死にたい、です」

まるで現実から逃避するように虚ろな目をする人間が酷く気に障り、頭にきて、いっそのこと噛み砕いてやろうかとドラゴンは思ったが、間違いなく後味が悪いだろうと思い、やめた。

「ならば、ひとつだけ質問に答えろ」
「……なんですか?」
「魔物を飼育していた貴様は魔物に食事を与えていた筈だ。でなければ餓死してしまうからな」
「……何が、言いたいんですか?」
「貴様は飲食店とやらで下働きに勤しみ、その稼いだ金で魔物の肉を買い、飼育する魔物の餌としていた。そうだろう? そうだろうとも!」
「……うるさい」

こちらを睨みつける人間をドラゴンは嘲笑う。

「何が魔物を愛しているだ! 片腹痛いわ! 貴様は自らの手を汚すことが嫌だっただけだ!!」
「うるさい、うるさいっ!」
「いいか! 貴様は愛する魔物の為に! 見ず知らずの誰かが狩った魔物の肉を! 自分がやったわけではないとそんな言い訳をしながら! 毎日! 自分の魔物へ与えていたというわけだ!! 」
「……もう、やめて」

反論も出来ずに、泣き出した人間に対して、ドラゴンは火の粉を飛ばしながら責め立てた。

「何が魔物を愛しているだ! 狂っている! 倒錯している! だから貴様は気味悪がられた! だから貴様は迫害され、国を追われたのだ!!」

断言すると人間はこくりと頷き、非を認めた。

「はい……そうです。もう、許して、ください」
「駄目だ。許さん」
「お願いします……私はもう、死にたいんです」
「駄目だ。死なせん」

ドラゴンの主人は人間から権利を奪い取った。


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