28: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:46:43.42 ID:8+PeY8Rzo
「いやぁ。346さんまた“濃ゆい”子を連れてきたんだねぇ! 尖ったキャラしてるわ!」
「“濃ゆい”、尖った……そう見える?」
プロデューサーは質問とも言えない口調で一言だけ放った。
29: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:48:26.17 ID:8+PeY8Rzo
*
「ありゃ何も理解してないな」
30: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:49:30.04 ID:8+PeY8Rzo
話しながらふと、さっきの男の笑い声が頭に響き渡る。
思い出してもモヤモヤした気持ちしか残らないから、と無理矢理追い払った。
「私の憧れのアイドル像を、ようやく皆さんの前で表現できるチャンスだと思ってます。
31: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:50:50.74 ID:8+PeY8Rzo
*
レッスンは数日では足りない。 袖で待機している間、何度そう思ったか。
32: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:51:52.58 ID:8+PeY8Rzo
だがこれしきでへこたれては居られない。
ようやくアイドルになれたのだから、今更後には引けない。
ようやく、ようやく本当のアイドルとして第一歩を踏み出せるのだ。
憧れの清純派アイドルとしての第一歩。
33: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:53:17.92 ID:8+PeY8Rzo
「うーん、そんなことないんじゃない? そりゃ、イマドキって感じはするけどさ」
「……だけど、それが流行ってものですよね?」
「まあな」
「だったら、私もそんなスタイルを見習っていくのがきっと正しいんでしょうね」
34: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:55:00.60 ID:8+PeY8Rzo
「うん、だから、観客の声がさ。 入っちゃわないかと思って」
「声ですか?」
「したら自分の歌拾ってもらえなくなるかもだよなぁ」
「……さ、さぁ、どうでしょう……」
35: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:56:38.57 ID:8+PeY8Rzo
聞き返せないうちに、今度は司会のアナウンス。
『いやー、ライブは盛り上がるばかりですね! それでは、次のアイドルに登場してもらいましょう! どうぞ!!』
36: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:58:29.32 ID:8+PeY8Rzo
心はガチガチに緊張している。だけど頭は以外と冷静で、
薄暗くて観客がよく見えないなぁとか、あ、みんなサイリウム持ってくれてるとか、そういうとりとめのないことがよぎる。
それでも、練習していたとおりのスピーチはスラスラ口から出てきた。
37: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 23:01:04.58 ID:8+PeY8Rzo
*
曲が終わって、大きくお辞儀をして、少し間を置いてパラパラと、それからだんだんと大きくなっていく拍手を背に、蓮実はステージを後にする。
最終的には拍手も歓声もそれなりに頂けたし、初舞台としては及第点じゃないかな、と自分の中でぼんやりと考えていた。
38: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 23:02:16.96 ID:8+PeY8Rzo
「一応、長富は真剣だったんだけどな」
「え、そうなの? てっきりネタでやってるのかと……」
「……そっか。 分かんなかったか」
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