36: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:58:29.32 ID:8+PeY8Rzo
心はガチガチに緊張している。だけど頭は以外と冷静で、
薄暗くて観客がよく見えないなぁとか、あ、みんなサイリウム持ってくれてるとか、そういうとりとめのないことがよぎる。
それでも、練習していたとおりのスピーチはスラスラ口から出てきた。
「まだまだ初恋も知らない私ですが……バッチグーでノっちゃってくださいね!」
まだ分からない。 みんなの反応はどうなのか?
観察する余裕もなく今度はイントロが始まる。
先ほどの別のアイドルとは打って変わった、ポップでレトロなサウンドが耳に入ってくる。
蓮実にとっては何千回も聴き込んできた、身体の一部とも言っていい一曲。
歌い出しの息を吸い込んだとき、照明のまぶしさに慣れてきたのかようやく一人一人の表情が何となく分かってきた。
「「「…………?」」」
――うーん、やっぱりあんまりかも。
冷静さを保てるのが不思議だな、と蓮実はぼんやり考えていた。
それでもステージは刻々と続いていく。
歌自体はバッチリの出来。
ダンスも、この曲に関しては身体が覚えているから何の問題もない。
時には目を合わせて笑顔を配るのも忘れずに。
今日のステージでやりたかったことは全部叶った。
――叶ったけど。
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