22: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:38:20.60 ID:8+PeY8Rzo
……数分後、やはりというか結局夢中になってしばらく話し込んだところでハッと我に返る。
「すみません、私語り出すと止まらなくて、つい……」
「いいのいいの。 ……そうだ、今回の課題曲とは違うけど、なにか歌ってみてくれない?」
23: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:40:26.29 ID:8+PeY8Rzo
*
大サビまで歌い終わり、腕の最後の一振りを終えたところでトレーナーは少しの間唖然と口を開け、そして思い出したかのように拍手をし始めた。
24: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:41:44.76 ID:8+PeY8Rzo
「調子どう?」
「あっ、プロデューサーさん。 お疲れさまです」
トレーナーが向き直って一礼した。
25: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:42:52.02 ID:8+PeY8Rzo
「普段ならあまり曲目の変更はしないんですが――他の新人の子たちは、曲にこだわりがない子も多いので――
長富さんが希望するなら、そういうのもアリだと思います」
「だってさ。 どうする?」
「えっ、本当に……?」
26: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:44:03.05 ID:8+PeY8Rzo
*
翌日、レッスンは中休みということでラジオ局へのご挨拶をプロデューサーの付き添いで行うこととなった。
27: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:45:15.25 ID:8+PeY8Rzo
「お、おはようございます! 長富蓮実、16歳です」
「うん、すごいべっぴんさんだねぇ。 蓮実ちゃんっていうの? 初めまして」
「は、はい……」
「そんな緊張しなくてもいいよ、ガハハ。 ……んーせっかくだし、もっと蓮実ちゃんらしい何かを見てみたいなぁ」
28: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:46:43.42 ID:8+PeY8Rzo
「いやぁ。346さんまた“濃ゆい”子を連れてきたんだねぇ! 尖ったキャラしてるわ!」
「“濃ゆい”、尖った……そう見える?」
プロデューサーは質問とも言えない口調で一言だけ放った。
29: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:48:26.17 ID:8+PeY8Rzo
*
「ありゃ何も理解してないな」
30: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:49:30.04 ID:8+PeY8Rzo
話しながらふと、さっきの男の笑い声が頭に響き渡る。
思い出してもモヤモヤした気持ちしか残らないから、と無理矢理追い払った。
「私の憧れのアイドル像を、ようやく皆さんの前で表現できるチャンスだと思ってます。
31: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:50:50.74 ID:8+PeY8Rzo
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レッスンは数日では足りない。 袖で待機している間、何度そう思ったか。
32: ◆AsngP.wJbI[saga]
2019/04/23(火) 22:51:52.58 ID:8+PeY8Rzo
だがこれしきでへこたれては居られない。
ようやくアイドルになれたのだから、今更後には引けない。
ようやく、ようやく本当のアイドルとして第一歩を踏み出せるのだ。
憧れの清純派アイドルとしての第一歩。
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