33:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:37:35.55 ID:JbQZeQhn0
――えっ?
「あぁ、そうしろ」
今にも飛びかかりそうだった男の剣幕が、ようやく少しトーンダウンした。
34:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:42:28.23 ID:JbQZeQhn0
男は冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し、プルタブを開けて一息に飲んだ。
「親父の親父、つまり俺のジジイだな――そいつも、似たようなもんだったらしい。
結婚もしないまま、子供ができた途端に逃げたから、親父は母子家庭だった。
未亡人が子供を作ったと知った周囲の人間から、婆ちゃんと親父は相当に叩かれたんだってよ」
35:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:44:12.90 ID:JbQZeQhn0
「あぁ?」
男は缶を握り潰し、ジイサンに投げつけた。
「お前に俺の気持ちが分かってたまるか。さっさと帰れカス」
36:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:46:28.40 ID:JbQZeQhn0
「俺がアイツに説教するとでも思ったか?」
どうやら、僕のルートはすこぶる効率が良かったらしい。
今年は随分と仕事が早く終わり、まだ新年を迎えるまでには時間があった。
37:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:48:26.84 ID:JbQZeQhn0
「ただ、アイツの言ったとおりだ。
俺の身勝手のせいで、辛い思いをさせちまったのかも知れんのだから、説教する筋合いなんて無い。
まっ、謝ってやる気もサラサラ無いがな」
38:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:51:41.50 ID:JbQZeQhn0
「何で、って……代わりにやるからだろ? 年越しの手続きを」
「質問が悪かった。じゃあ、何で代わりが必要なんだ?」
「それは……」
「昔は、自分でできたのさ。
39:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:54:36.61 ID:JbQZeQhn0
――今の時代に留まりたいと願うだけで、本当に年越しができなくなるものなのか。
にわかには信じられないが、実際こういう仕事に携わっているのだから、疑う余地は無い。
だが、いま一つ腑に落ちない。
40:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 21:57:01.83 ID:JbQZeQhn0
「じゃあ何だよ」
さっさとアイツのつまみを回しに行けばいいのに。
いい加減、寒さで体が冷えてきて、ついイライラしてしまう。
41:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:00:23.77 ID:JbQZeQhn0
「長いこと、この仕事してると、色々と達観しちまうんだよ」
ジイサンの笑顔は、嬉しそうでもあるようで、どこか寂しそうでもあった。
それは、僕が勝手にそう思っただけかも知れなかった。
42:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:05:31.04 ID:JbQZeQhn0
チラッと、デロリアンの時計が目に入った。
あと数分で年が明ける――僕達の一年間が消える。
「ジイサンの言う通り、人は誰だって、心のどこかに恥とか自負を持っている。
それがあるから傷つくのだし、傷つきたくないから見栄を張る。
43:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:07:53.57 ID:JbQZeQhn0
「役回りが違えば、違うなりの需要はあるんだよ。
だから、俺もお前も、あのクソガキも皆同列だ……そうでもなきゃ、やってられんさ」
「――そうかもな」
49Res/44.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20