年越し代行
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42:名無しNIPPER[saga]
2018/12/28(金) 22:05:31.04 ID:JbQZeQhn0
 チラッと、デロリアンの時計が目に入った。
 あと数分で年が明ける――僕達の一年間が消える。

「ジイサンの言う通り、人は誰だって、心のどこかに恥とか自負を持っている。
 それがあるから傷つくのだし、傷つきたくないから見栄を張る。
 俺は、時代遅れだなんだと周りからバカにされるのも嫌だし、誰にも認められないのも嫌なんだ」

 自分で言いながら、あまりに安くてちっぽけな自尊心が情けない。
 彼のように顔を上げて笑い飛ばす事が、どうしても気恥ずかしい僕は、俯きながら自嘲気味に笑った。

「機械でも出来る業務に人的資源を投入して、俺やジイサンのような時代遅れを生み出すこの仕事に、何の意義があるだろう。
 全自動化のご時世に、全部アナログでやっているこの年越し代行の方こそ、時代遅れとして淘汰されていけばいいのに」


「それでも、畳屋は死なない」

 顔を上げると、ジイサンはなぜか、とても嬉しそうにこちらを見ていた。

「どんなに需要が無くなっていこうと、ゼロになる事は無い。
 なぜだか分かるか?」

 彼が吐き出した真っ白な煙は、雪がまだらに散る暗闇に曖昧な彩りを与えていく。



「正しさが無い分、どっかで認めてくれる人は必ずいるもんだ。
 畳屋も、お前や俺みたいな奴でも……いつの時代もどこかにきっと、必要とする誰かが」


「――正しさが無いから?」



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