【モバマス】水曜日の午後には、温かいお茶を淹れて
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27: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/10(月) 22:07:21.27 ID:Wp4M41Qe0
 扉が閉まって、少しして、私は無意識に止めていた息を長い時間をかけて吐き出した。
 ――観たい。サマーフェスでマキノちゃんはバックダンサーとしての出演だけれど、マキノちゃんを観たい。
 きっと、すごいマキノちゃんが観れる。
 私は膝の上に置いていた両手をぎゅっとにぎった。
 その時、事務室の扉が開いた。プロデューサーさんが中に入ってくる。
以下略 AAS



28: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/10(月) 22:08:30.42 ID:Wp4M41Qe0
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 そうして、美城プロダクション、サマーフェスの当日がやってきた。
 私はくるみちゃんを引率して、開演前に舞台裏でくるみちゃんに舞台の説明をする。
 初めて見る舞台裏が珍しいのか、くるみちゃんは口をあけたまま、目を輝かせてあちこちを見ていた。
以下略 AAS



29: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/10(月) 22:09:31.32 ID:Wp4M41Qe0
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 開演前のアナウンスが終わってしばらく経ち、客席で鳴っていたBGMは徐々に大きくなる。それと同時に、客席の照明は暗くなり、お客さんが持っているペンライトの色とりどりの光だけが残り、そして、お客さんは期待の声を大きくする。

「始まるよ、くるみちゃん」
以下略 AAS



30: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/10(月) 22:10:44.97 ID:Wp4M41Qe0
折り返しです。
次回は12/13に更新予定です。


31: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/13(木) 19:55:11.12 ID:xAj2PbQr0
4.Juglans

「うっ、うえっ、ふぇ、ひぐっ、ひっ、うえええ、びえええええ〜〜!」

 大型家電量販店のスタッフルームに用意された待機場所で、くるみちゃんはとうとう声をあげて泣き出してしまった。涙はあとからあとからあふれて、衣装の袖はびっしょり濡れちゃってる。
以下略 AAS



32: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/13(木) 19:57:45.63 ID:xAj2PbQr0
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「今日はよろしくおねがいします!」

「よろしくおねがいしましゅ……します」
以下略 AAS



33: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/13(木) 19:59:39.74 ID:xAj2PbQr0
 しばらく続けていて、嬉しい誤算があった。くるみちゃんの舌ったらずな呼び込みはかえってお客さんの耳に残り、くるみちゃんの健気な様子がお客さんの心を打ったみたいで、くるみちゃんからクリアファイルを受け取ってくれるお客さんがたくさんいてくれたこと。
 直接くるみちゃんに『がんばってね』と声をかけてくれるお客さんも居て、くるみちゃんは恥ずかしそうにしていたけれど、でもそれ以上に嬉しそうだった。
 こういうのも才能っていうのかもしれない。私よりずっと活躍してくれている。心配する必要もなかったのかも。

 一回目のイベント開始時間が近づく。私たちはクリアファイルの配布を中断し、イベントの準備をすることになった。準備といっても、イベントの流れを確認するくらいで、難しいことはほとんどない。
以下略 AAS



34: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/13(木) 20:02:36.05 ID:xAj2PbQr0
 それから十数分、イベントは問題なく進んだ。司会のお姉さんの指示で、私がアステルを使ってインターネットの検索をしたり、童話を読んでもらったり、天気予報や料理のレシピを訪ねたり、登録した照明器具のスイッチを入れたり、スマートフォンを使ってメッセージをやりとりしたり。
 くるみちゃんのアステルの挙動に対する一つ一つのリアクションはとても新鮮で、イベントに参加したお客さんたちにも好評だった。

 
 これなら、心配はいらないかな。私がそう思ったころ、それは起こった。
以下略 AAS



35: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/13(木) 20:05:06.68 ID:xAj2PbQr0
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 そして、時間は現在に戻る。

「うえ、うぇぇえ、ふぇ〜〜ん、えぇ〜〜ん」
以下略 AAS



36: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/13(木) 20:07:14.85 ID:xAj2PbQr0
 くるみちゃんはプロデューサーさんからの言葉を反芻しているみたいだった。眉間にしわを寄せたり、自分で涙をぬぐったり、両手をぎゅっと握りしめたり、唇を結んだりして、必死に自分と戦っている。
 私は、せめて自分もなにか力をあげられたらと思い、くるみちゃんの背にそっと手を当てて、祈った。

「ぷろでゅーしゃー」くるみちゃんは、両の大きな瞳からぽろぽろ涙をこぼしながら、それでも笑顔で言った。「くるみ、泣き虫で、ゆるゆるでおバカだけど、でも、お仕事、がんばりたい。涙がこぼれちゃっても、だいじょうぶかな?」

以下略 AAS



37: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/13(木) 20:08:49.94 ID:xAj2PbQr0
 司会のお姉さんはマイクを構える。

「はい、くるみさん、ありがとうございます! 困ってしまいました。アステル、反応しませんでしたね。けれど、これは故障でも、もちろんくるみさんが失敗したわけでもないんです。アステルは呼んでくれた人の声を覚えて、間違えてほかの人の声に反応しないように聞き分けます。このアステルは、第一回で夕美さんの声を覚えていたので、くるみさんの声に反応させるには、新たにくるみさんの声を登録をする必要があるんです」

「ふぇ、そうなの? あしゅてる、しゅごい……」
以下略 AAS



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