【モバマス】水曜日の午後には、温かいお茶を淹れて
↓ 1- 覧 板 20
16: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/08(土) 00:24:17.41 ID:1bCRB9ws0
「私、は」
なんとか声を出そうとして、でもそこで詰まってしまい、私は足元を見た。
視界の端に見えているプロデューサーさんは、黙って私の言葉を待っている。
なにか言わなきゃ、と私が迷っていると。
17: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/08(土) 00:25:40.78 ID:1bCRB9ws0
「私は相葉夕美っていうんだ。あなたはなんていうお名前?」
「ぐすっ。くるみ……大沼、くるみ」
「大沼くるみちゃんかぁ。くるみちゃん。素敵な名前だね!」
18: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/08(土) 00:27:27.44 ID:1bCRB9ws0
---
「それで……」マキノちゃんが机の上に置かれたプロフィールシートを揃えて、クリアファイルに戻す。「このシートの子、大沼くるみちゃんは、私たちのユニットに参加することになった、ということね」
「うんっ! プロダクションの人が親御さんにもちゃんと説明をしてくれたんだって。決心してくれたみたいでよかった! 自信をもってくれるといいなあ」
19: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/08(土) 00:28:42.57 ID:1bCRB9ws0
---
「うん、いいねー、ちょっとだけ顔を右に傾けて、そう。じゃ、撮るよー、くるみちゃん、笑ってー」
シャッターの音が連続する。
20: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/08(土) 00:30:37.66 ID:1bCRB9ws0
---
「せっかくだから、見学だけじゃなくてちょっと身体を動かしてみますか?」
ダンスレッスンのトレーナーさんからそう問われて、くるみちゃんはふぇっ! と戸惑いの声をあげた。
21: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/08(土) 00:31:07.53 ID:1bCRB9ws0
くるみちゃんは言われるがままに立ち上がる。
「夕美さん、さっきのレッスン曲よりちょっと遅いくらいのテンポで、手拍子してもらっていいですか?」
「うん、このくらいかな?」
22: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/08(土) 00:32:11.24 ID:1bCRB9ws0
予告から日付を越えてしまいました。申しわけありません。
次は12/10に投稿します。
23: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2018/12/10(月) 22:00:28.03 ID:Wp4M41Qe0
3.Gerbera
「……なぁーんかさ、はぁとー、やっぱ干されてね?」
くるみちゃんの初めてのレッスンから一カ月程度が経った水曜の午後、はぁとさんはノートパソコンのある席に座り、頬杖をついて、プロデューサーさんが淹れてくれたお茶の入った湯のみを見つめながらぼそりとつぶやいた。
24: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/10(月) 22:03:34.44 ID:Wp4M41Qe0
「……戻りました。大沼さんとそこで会ったので、一緒に」
ちひろさんの背後の扉が開いて、穏やかな声がした。
プロデューサーさんとくるみちゃんが、部屋の中に入って来た。くるみちゃんは両手を胸のところでぎゅっと握って、とても不安そうな顔をしている。はぁとさんの声は事務室の外にも聞こえていたみたい。
プロデューサーさんはいつもの調子で、部屋の中に歩いてくると、帽子を脱いで長机の上に置いた。
25: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/10(月) 22:04:36.41 ID:Wp4M41Qe0
「それでは、小日向さんがいませんが、全体に関わる連絡を。ユニットの活動に関して、曲と振付を発注しています」
「えっ!」
私の口から思わず声が漏れた。マキノちゃんも目を見開いていたし、はぁとさんも一瞬手が止まり、プロデューサーさんのほうを見た。
26: ◆Z5wk4/jklI[sage saga]
2018/12/10(月) 22:05:59.39 ID:Wp4M41Qe0
---
それからしばらく経ったある日の午後、私は美穂ちゃんと一緒にお昼を近くの喫茶店で済ませてから、事務室のドアを開けた。
事務室の中の椅子に、マキノちゃんが真剣な目をして座っていた。
私と美穂ちゃんは、ふたりとも入り口のところで固まってしまった。
61Res/162.03 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20