高垣楓「おでん」
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1:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 22:48:46.56 ID:HxHKUsXj0


 『続けて交通情報です――』


この街にしちゃあ珍しく静かな夜だった。


聞こえる音と言や、すぐ後ろのホームへ滑り込んで来る京浜東北線やら宇都宮線のブレーキに、
脇へぶら提げたラジオから流れるNACK5の番組ぐらい。
さっきまではそこに手元で食材を仕込む包丁の音も加わってはいたが、
それも終わった今じゃあ煙草を吹かす溜息に取って代わられていた。

意味の無いのは分かっちゃいるが、それでも俺は外へ顔を出して天を仰ぐ。
雪は何食わぬ顔で静かに、だが遠慮無く降り続いていて、重ねて零した溜息は一瞬にして凍り付いた。この分ならアスファルトの上にだって積もりそうな勢いだった。

まぁ、俺が悪かったのも否定はしない。
それこそ昨晩のラジオで降雪確率は五十パーセントを超えると聴いていたし、
なのにせっかく仕入れておいた食材を自分の飯にしちまうのも寂しいと、
こうしていつも通りにおでん種にしちまったのは完全無欠に俺のせいだ。

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2:名無しNIPPER[sage]
2018/04/14(土) 23:01:07.05 ID:SdIRZPySO
酒が進むくん


3:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 23:02:40.92 ID:HxHKUsXj0

修行の為に週一で開けちゃあいるが、全く客の来ない日だってある。
……その来る客だって半分以上は仕事仲間だしな。
あいつらもこんな冷え込む夜にゃあとっとと家へ帰って熱燗でも一杯やってる頃だろう。
別に儲けるつもりでやってる訳でもなし。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 23:03:21.25 ID:HxHKUsXj0

寒い日の温もりこと高垣楓さんのSSです

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以下略 AAS



5:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 23:13:16.05 ID:HxHKUsXj0


 『ここにしませんか? いえ、ここにしましょう。屋台飲みって憧れだったんです、私』
 『構いませんが……ちょっと入り辛いですね。こういう店って常連さんで埋まってそうで』

以下略 AAS



6:名無しNIPPER
2018/04/14(土) 23:21:29.14 ID:NxC4iUeM0
この話冬を食むで一番好き


7:名無しNIPPER
2018/04/14(土) 23:26:41.58 ID:NxC4iUeM0
シンデレラの靴の人期待


8:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 23:27:09.61 ID:HxHKUsXj0

ようやく曇りの取れた眼鏡を兄ちゃんは掛け直し、姉ちゃんはポケットにしまった。
掛けないのか、ソレ。

 「わぁ……」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 23:34:28.46 ID:HxHKUsXj0

八海山の四合瓶を抜く。徳利に注いで兄ちゃんの前へ置き、瓶の方を姉ちゃんへ渡した。
まさかラッパ飲みしねぇだろうなと一瞬だけ思ったが、
意外にもおとなしくぐい飲みへ注ぎ直してくれた。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[saga]
2018/04/14(土) 23:47:03.37 ID:HxHKUsXj0

注文の品を舟から揚げる。
器へ盛りつけてから汁を注ぎ足し、辛子の小瓶を添えてそれぞれの前に置く。
屋台の中は外に比べれば随分と暖かいが、皿からは勢い良く湯気が立っていた。

以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage]
2018/04/14(土) 23:48:05.80 ID:5Yh/XOjB0
幸子の小瓶に空目


12:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 00:01:10.25 ID:ah/HvYxA0

つみれを口へ放り込み、八海山を勢い良く空にする。
満足げに目を閉じる姉ちゃんから視線を外し、隣の兄ちゃんに顎で訊ねた。

 「あー、残念ながら本当です」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage]
2018/04/15(日) 00:01:44.08 ID:ah/HvYxA0
カライイってか


14:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 00:05:10.70 ID:ah/HvYxA0

はぁ、珍しい事もあるもんだ。
ラジオだテレビだなんてのは別世界のモンだとばかり思ってたからな。
にしてもだ。

以下略 AAS



15:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 00:09:18.54 ID:ah/HvYxA0

姉ちゃんがぐい呑みを空にする横で、今度は兄ちゃんがあちこちを眺め回している。
首を傾げて悩む様子に、俺の方も首を傾げた。

 「どうかしたか、兄ちゃん」
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 01:20:10.08 ID:ah/HvYxA0

 「けほっ……楓さん」
 「まぁまぁ。酒も滴る良い男ですよ、プロデューサー♪」
 「……む」

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 01:31:33.25 ID:ah/HvYxA0

明後日の方を向く兄ちゃんへ隣の姉ちゃんがチラチラと視線を送る。


いやもうチラチラじゃねぇな。滅茶苦茶見てるわ。
以下略 AAS



18:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 15:10:02.45 ID:ah/HvYxA0

兄ちゃんが慌ててぐい呑みに口を付ける。
姉ちゃんの手が底を支えて、その角度が見る見る内に垂直へ近付いていく。
アルコール度数九十度、なんてな。

以下略 AAS



19:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 15:13:48.16 ID:ah/HvYxA0

 ― = ― ≡ ― = ―

 「しらたき貰えますか?」
 「あいよ」
以下略 AAS



20:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 15:22:40.97 ID:ah/HvYxA0

 「酒をかっ喰らって、良い男を振り回して、安酒屋の売れ残りを誑かすようなのばっかりか」
 「……ふふ、大丈夫ですよ。残り物には福があるって、確かな情報筋から仕入れました」
 「そりゃ良い事を聞いちまった。で?」
 「そうですね……」
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[saga]
2018/04/15(日) 15:30:01.58 ID:ah/HvYxA0

 「そうか」
 「はい」
 「ありがとよ。店じまいだ」
 「はい……あ、そういえばお幾らでしょう」
以下略 AAS



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