251:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:20:38.90 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
プロデューサーが倒れた後も、楓は仕事を続けた。
「ファンの皆さんを、不安にしたくありません」
252:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:21:34.07 ID:1qpUpdjR0
「申し訳ありません」
会うなり、深々と頭を下げて謝罪の言葉を口にする。
「いえ、顔をあげてください」
253:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:23:08.39 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
「すごいなあ、ファンの前ならちゃんと個人的な感情は抑えるんだ」
「やっぱり『高垣楓』は素敵だ! どんなことになっても応援するよ」
254:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:24:13.51 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
その年のクリスマス、珍しく都心にも雪が降った。
夕暮れの空に、白い光が舞う。
255:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:25:38.31 ID:1qpUpdjR0
瑞樹は、硬い床を靴で叩く。苛ついているように、荒い音が寒空に響く。
瑞樹は楓の隣に立つと、黙って空を見る。
つられて、楓も空を見る。
256:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:26:38.52 ID:1qpUpdjR0
「見た人が、そこに意味を求めてそうなった」
よくできました、と微笑むと、瑞樹は楓の肩をそっと叩く。
「そう。そして、意味を求めることに、悪意はないの」
257:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:28:30.44 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
高垣楓は意を決すると、すぐに事務所の代表の元へと足を運んだ。
執務室で書類と格闘するその人は、半年前に比べると大分老け込んでいた。
258:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:29:17.11 ID:1qpUpdjR0
◆◆◆
翌日、改めて代表の執務室に呼び出されると、そこには男性――高垣楓と恋仲であると噂された男が居た。
彼の傍には担当しているアイドルたちが居た。
皆、不安そうに大人たちを見守っている。
259:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:30:26.67 ID:1qpUpdjR0
「だって、そうでなければおかしい」
「プロデューサーなら、きっと幸せにしてくれる」
「見た目もお似合いだし、大丈夫」
高垣楓には理解できなかった。
260:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:31:10.28 ID:1qpUpdjR0
「よく言ってくれた」
「うんうん、やっぱりプロデューサーはすごいよ!」
「それなら、みんな安心だね」
なのに、この場に居る人間は、高垣楓以外にその言葉を賞賛する。
261:名無しNIPPER[saga]
2017/09/26(火) 23:32:13.43 ID:1qpUpdjR0
――『ばけもの』は、見ていた。
高垣楓は、理解した。
もう、人々が求めているのは高垣楓の皮を借りた『ばけもの』なのだと。
想像の中で肥大化し、それでいて自分たちの思い通りになる化け物なのだと。
344Res/309.22 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20