【ゆるゆりSS】ふたりの距離
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3:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:23:16.44 ID:I2AyKHWk0
 途中からはほとんど向日葵の顔も見ていなかった。それが気付くのを遅らせた。
 ふと見やると、向日葵は深くうつむきながら、冷たい地面にしゃがみこんでいた。

(えっ……?)

以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:24:25.52 ID:I2AyKHWk0
『私はひま子の気持ち、わかるよ』

 その日の夜。
 櫻子は花子から渡された電話を通して、今は大学に通うために遠方で下宿している撫子から、ありがたいお説教を受けていた。
 事の顛末について花子から報告を受けた……というより「どうしよう」と相談されていた撫子は、「いつかはこんな日が来るってわかってたじゃん」と呆れながらも、それでも何も言わずにはいられないようで、黙って電話を替わった妹に言葉をかけていた。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:25:23.91 ID:I2AyKHWk0
 翌日。
 ほとんど深く眠れないまま迎えた朝、向日葵と一緒に学校に行こうと思ったが、なかなか家から出てこない。数分経っても出てこないのでおかしいと思って家の人に聞いてみると、用事があって先に行ったようだと言われた。
 急いで学校に向かうと、そこで初めて今日が二学期の終業式であるということを思い出した。どこか学校全体のムードも浮ついているように感じる。しかし櫻子はそれどころではなかった。

 向日葵はというと、普通に教室にいた。一見いつもどおりに見えたが、なぜか櫻子の方を見ようとしない。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:26:20.13 ID:I2AyKHWk0
 公園について早々、向日葵は冷え切ったベンチに座ることもなく、葉の一枚もついていない木の下に立ちながら呟いた。

「……あなた、どこの高校行くんですの」
「えっ……」

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:29:02.69 ID:I2AyKHWk0
 撫子も帰省して久しぶりに賑やかになると思いきや、今年の冬休みの大室家は静かなものだった。
 理由はもちろん、一家で一番うるさい櫻子に元気がないこと。
 姉や妹がリビングでくつろいでいる間も、櫻子は部屋に閉じこもったままだった。

 12月24日。クリスマスイブ。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:30:07.66 ID:I2AyKHWk0
 そのとき、部屋のドアが開いて帰省中の撫子が入ってきた。
 反抗期真っ盛りといった妹の小さい背中に、鋭く言葉を投げかける。

「ドンドンうるさいよ」
「……出てって」
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:31:21.36 ID:I2AyKHWk0
 12月25日。
 いつも以上に重たい目蓋を開けて櫻子が目をさますと、外がやけに明るかった。
 カーテンを開けてみると、一面の雪景色。いつの間にこんなに降っていたのだろう。
 視界の端に向日葵の家が写った。少し目を細めて、向日葵が玄関から出てきたりしないだろうかと思ったが、何の変化もない。
 諦めてベッドの方に戻ろうとすると、そこでベッドサイドに何かが置かれていることに気付いた。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:32:41.10 ID:I2AyKHWk0
 冬休みが終わり、三学期。
 櫻子と向日葵は中学二年生として、そして花子は小学三年生として、その学年の最後の学期を迎えた。

 結局櫻子は冬休みの最終日まで、ほとんど欠かすことなく、何なら日に日に勉強時間を延ばしながら机に向かい続けた。今までだったら信じられないような光景だが、それは花子の目の前で確かに繰り広げられた現実だった。
 実際の受験があるという日は約一年後。まだまだ遠い。けれどこの分なら、ひま姉は櫻子のことを少しは見直して、今までのことをすぐにでも許してくれるようになるだろう。花子はそう思っていた。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:34:47.59 ID:I2AyKHWk0
 櫻子と向日葵の間に生じている異変。
 それに気づいているのは花子や楓だけではなく、あかりやちなつもまた、同じクラスに通うものとしてまざまざと肌で感じていた。

 おかしくなり始めたのは、やっぱり冬休みに入る前。
 周囲に対してはいつものように振る舞いながらも、一言も言葉を交わさず目も合わせていないふたりのことを、あかりとちなつはずっと心配していた。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:36:13.54 ID:I2AyKHWk0
 ちなつとあかりがそんな話をしていたときから数刻が経ったころ。
 七森中の生徒会室には、久方ぶりの客人が訪れていた。

「久しぶり、古谷さん」
「あら、先輩方」
以下略 AAS



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