【ゆるゆりSS】ふたりの距離
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11:名無しNIPPER[sage saga]
2023/09/07(木) 21:34:47.59 ID:I2AyKHWk0
 櫻子と向日葵の間に生じている異変。
 それに気づいているのは花子や楓だけではなく、あかりやちなつもまた、同じクラスに通うものとしてまざまざと肌で感じていた。

 おかしくなり始めたのは、やっぱり冬休みに入る前。
 周囲に対してはいつものように振る舞いながらも、一言も言葉を交わさず目も合わせていないふたりのことを、あかりとちなつはずっと心配していた。
 今までにもこんなことは何回かあった。けれど放っておけばいつの間にか元に戻っていて、またいつもみたいないがみ合いや喧嘩が始まる。
 それが、櫻子と向日葵だった。

 冬休みに入ってすぐ、櫻子から遊びの予定のキャンセルを告げられた際は「今回はちょっと長引きそうだね」と話し合っていたあかりとちなつ。それでも休みが明けるまでには必ず元に戻っているだろうと思っていた。
 それなのに。

「……ちなつちゃん」
「……やっぱり、まだダメ?」
「そうみたい……」

――櫻子と向日葵が、関わり合うのを避けている。
 ふたりとも、基本的にまったく言葉を交わさない。目を合わせることもない。朝はいつもバラバラに学校にやってくるし、休み時間なども一緒になるのを避けている。
 そのくせふたりとも、「お互い以外」の人には気丈に振る舞っているから、それが余計に「ふたりの会話だけがない」という違和感を際立たせている。

 あかりやちなつでなくとも、ここまで一緒に時間を過ごしてきたクラスメイトなら誰しもが異変に気づいていることだろう。
 向日葵と櫻子の間に生じている、かつてない類の不和。
 解決に向かってほしいが、自分たちにできることはあるのだろうか。

 あかりもちなつも、結衣と京子の来なくなったごらく部室で思い悩んでいた。向日葵と櫻子の間に確執がある状態では、学校生活の面白さは大きく損なわれる。しかし、周囲の力によってふたりをむりやりくっつけようものなら、二度と関係が修復不可能になってしまうのではないかという恐怖もある。
 そして、互いに無視をしあっているだけというのがまた難しい。これなら取っ組み合いのケンカをしてくれた方が何倍もマシだった。

「あかりね、この前ちょっとだけ櫻子ちゃんに聞いてみたの。どうしてこんなことになっちゃったのって」
「うそっ」
「でもね……あんまり教えてもらえなかった。それどころか、櫻子ちゃん、『私が悪いんだよ』って……あかり、あんな櫻子ちゃん見たことない……」
「えー……ってことは、向日葵ちゃんに聞けばわかるのかな……でも、私たちが聞いて簡単に解決できることなら、こんなに続いてないよね……たぶん」
「うん……」


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