高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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20:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:52:36.68 ID:mOMWMpAw0
「さて……」

これまでずっと後ろで見守ってくれていた看護師さんが、いつの間にか私のすぐ後ろにまで迫っていた。座っている私の上から、子供に絵本を読んであげる母親のような高い目線でメニュー表を見下ろす。

「そういえば、加蓮ちゃんの好きな食べ物を聞いていなかったわね」
以下略 AAS



21:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:53:07.28 ID:mOMWMpAw0
ホットケーキやパンケーキといったメニューには、すべて「みに」という言葉がついていた。
たぶん、しろちゃんが渡してもらったフォークと同じくらいの、私なら一口で食べれてしまうサイズ。
そーちゃんとしろちゃんは、まだどれを選ぶか迷っているみたい……というより、ほとんどが知らない名前っぽい。
入院患者にとって、カフェのメニューは全部テレビの向こうの物だもんね。
藍子もそこをちょっと気にしているみたいで、テーブルの下でこっそりメモを取っているようだった。
以下略 AAS



22:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:53:36.85 ID:mOMWMpAw0
好奇心が何度も爆発した結果、助け舟を出したのは藍子だった。

「実は、次のページにも用意しているんです。ほらっ」

そこには「♪藍子のオススメ♪」と、クレヨンで書いたような文字が。下には2枚の写真が貼ってあって、片方は2ページ目にもあった"みにホットケーキ"に、たっぷりとシロップをかけたもの。もう1枚は、やはりまるまった文字で「?」と書いてある。
以下略 AAS



23:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:54:06.89 ID:mOMWMpAw0
話を逸らせればなんでもよかった。でも脇道の選び方を間違えたかもしれない、そう思ったのは、そーちゃんが例の肘曲げポーズで手を上げて、その手の行き先を失った時だった。

「わたしのおはなし……」

看護師さんも、僅かに険しい顔になる。……病院の患者ならともかく、入院患者は自分の言葉をたくさんは持っていない。
以下略 AAS



24:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:54:36.91 ID:mOMWMpAw0
「うーん……。でもね……」
「……どうしたの? そーちゃん」
「おいしゃさん、ときどき家にかえってもいいって言うんだけど……。かえっても、たのしくないの。びょういんの方が、たのしい!」

一時帰宅の許可。確かクリスマス会で話した時にも、少し家に帰れるようになってて、おばあちゃんと話したとか言ってたっけ。
以下略 AAS



25:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:55:07.24 ID:mOMWMpAw0
実際のところ、実体験と記憶を全て取っ払って考えると、そーちゃんの考えも分からなくはない。

「加蓮ちゃんが最近、よくバラエティ番組に出るものだから。そーちゃん、真似し始めちゃうのよ。お陰ですっかり、手の焼く子になっちゃってねぇ」
「いやそんなこと言われても……。私だって色々やってみたいしっ。いいじゃん、患者さんの本音が聞きたいとか言ってたの看護師さんだし」
「だし!」「……しっ」
以下略 AAS



26:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:55:37.74 ID:mOMWMpAw0
答えのゴールラインをずらしている間に、藍子がちっちゃなホットケーキと、クリスマスのショートケーキをさらにミニチュアにしたような物を運んできてくれる。

ほっこりとする湯気と、真っ白の隙間から柔らかそうなスポンジの見える三角形。
そーちゃんが、笑い声に引っ張られて「ほーっ!」と変な声を出しちゃった。それで藍子が笑って、ずっと首を傾げていたしろちゃんも、ほんのちょっぴり口元を緩めて。

以下略 AAS



27:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:56:06.81 ID:mOMWMpAw0


□ ■ □ ■ □


以下略 AAS



28:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:56:43.89 ID:mOMWMpAw0
しばらくして――そーちゃんが満足げに「ごちそうさまでした!」と言い放った頃には、しろちゃんは目線の答えを見つけたみたい。
藍子のことを見つめ続ける。
藍子もまた、しろちゃんを見守ってあげて……やんわりと、頬を緩めた。

ファンを見ているアイドルの顔。
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:57:36.70 ID:mOMWMpAw0
「……病院、どう?」
「どう、って?」
「それは……。……アンタも、元気にしてた?」

看護師さんはとても嬉しそうに笑う。ぼんやりと泳ぐ視線が、素っ気ない装いのモミの木へと止まる。
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:58:07.10 ID:mOMWMpAw0
「はいっ!」

そして、またまたそーちゃんが唐突に手を上げる。もちろん肘を曲げて……曲げすぎていて、ほんの少しだけ"ぶりっこ"のポーズみたいになっちゃってた。
それでも可愛いのがちょっぴり面白い。さすが、将来私になってくれるって言うだけのことはある。

以下略 AAS



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