高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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25:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:55:07.24 ID:mOMWMpAw0
実際のところ、実体験と記憶を全て取っ払って考えると、そーちゃんの考えも分からなくはない。

「加蓮ちゃんが最近、よくバラエティ番組に出るものだから。そーちゃん、真似し始めちゃうのよ。お陰ですっかり、手の焼く子になっちゃってねぇ」
「いやそんなこと言われても……。私だって色々やってみたいしっ。いいじゃん、患者さんの本音が聞きたいとか言ってたの看護師さんだし」
「だし!」「……しっ」
「……藍子ちゃんの苦労が分かるわぁ」
「こら、それどーいう意味」

いつ頃からあの個室にいるのかは分からないけど、ずっと居続けることでどんな場所でも自分の居場所だと思ってしまう。小さい頃は、なおさら。
私としては、病院という狭い世界に定着してほしくはなかった。そんな場所を自分の世界だって思ってほしくはない。
だけど、なんて言えばいいのか分からない。
楽しいって言うのなら、その気持ちを否定してあげたくはない――。

「……そーちゃん」
「はいっ」
「きっと……看護師さんやお医者さんも、そーちゃんが歌うと喜んでくれると思うの」
「そうなの?」

だから私は、別のアドバイスをしてあげることにする。

「ううん。そーちゃんが歌うと、みんなが喜ぶ、そんな人になってほしいな」
「……ええっと、わたしがうたうと、みんながよろこぶ人? に、おいしゃさんがなるの?」
「違うよ。そーちゃんが、そうなるの」
「そうなの? それって、かれんちゃんみたいだね!」
「でしょっ?」
「かれんちゃんがうたってたら、わたし、うれしくなるの! あれっ? じゃあ、わたしがうたって、みんながよろこんでくれたら……わたし、かれんちゃんになれるの!?」
「ふふっ、そういうこと。そーちゃんは、賢いんだね」
「おいしゃさんも、そう言ってくれてた! じゃあ、わたし、うたったらみんながよろこぶ人になる! ……えっと、どうやってなればいいんだろ」
「歌い続けていたら、いつか分かるよ。だから――」
「やくそく、だよねっ」
「うんっ」
「ほっほっほー!」
「……ほっほっほーっ」


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