高森藍子「加蓮ちゃんたちと」北条加蓮「生まれたてのカフェで」
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26:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/25(金) 20:55:37.74 ID:mOMWMpAw0
答えのゴールラインをずらしている間に、藍子がちっちゃなホットケーキと、クリスマスのショートケーキをさらにミニチュアにしたような物を運んできてくれる。

ほっこりとする湯気と、真っ白の隙間から柔らかそうなスポンジの見える三角形。
そーちゃんが、笑い声に引っ張られて「ほーっ!」と変な声を出しちゃった。それで藍子が笑って、ずっと首を傾げていたしろちゃんも、ほんのちょっぴり口元を緩めて。

「これ、おいしい! かんごしさん、これ、ぜんぶたべていいの!? たべちゃだめって、言わない?」
「ええ、もちろん」
「そーちゃんと、しろちゃんが食べちゃ駄目な物は、ぜんぶ調べましたから。このホットケーキも、ショートケーキも、2人が食べられるものしか入っていないんですよ」
「すごーい!」「……い!」
「そして……加蓮ちゃんも。あなたの好きな味は、これで合っていますか?」

子供サイズのフォークは握ることも難しく、まるでマカロンを食べるように口へと運ぶことにした。
歯を立てた瞬間に凝縮された甘みが広がり……だけどサイズがサイズだからか、あっという間に身体の中へと溶けてゆく。舌に残る生地のふんわり感を、大事にしてあげたかった。
ショートケーキは、生クリーム特有の甘ったるさがほとんど感じられない。その代わりに果物的な甘味があって、こちらは一口飲み込んだ後からすぐに食べたくなる。
ジュース、少しだけ残しておけばよかった。そう思ったが矢先に、藍子が1つのカップを持ってきてくれる。
見慣れた漆黒色とほんの少しのクリーム色。今日初めてのコーヒーだった。

「……うんっ。全部、私の好きな味だよ」
「よかった。今日は、加蓮ちゃんも大切なお客さま。そーちゃんや、しろちゃんのことも、大事ですけれど……加蓮ちゃんだって、忘れた訳ではないんですからね?」
「そんなこと言ってないのに、もうっ」
「えへへ」

……少し、ズルいことを思っちゃった。
それだけ藍子は、私のことが好きなんだな……なんて。
今日の主役の2人には、決して言えないようなズルいこと。

心臓の右端に生まれたぬくもりを、そっと抱え込んで。

「そーちゃん、しろちゃんっ。どう、美味しい?」
「すごい、すごい! おいしいっ!」
「…………、!」
「そっか。美味しいね、よかったね……」

キッチンシンクに、水が一滴垂れる音がした。それはカフェで聞く水音と、よく似ている物だった。


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