44:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:37:07.67 ID:FQVp12gN0
「実は新しい企画が立ち上がっていて」
ライラが落ち着いたのを見計って、プロデューサーが切り出した。事務所のアイドルから数人が選抜され、みんなでいろんな未体験のものにチャレンジしてみる企画が不定期で行われている。その次回枠にライラを推薦していたら、話が通ったとのこと。
「たぶん、楽器に挑戦してみる機会になると思う」
この企画はその都度のスポンサーや取材先のさじ加減で内容も規模も大幅に変わるため、毎度色合いがかなり異なるものになる。そして、プロデューサーが彼女を推した今回の企画が「ロックバンドにチャレンジする」というもの。
45:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:37:53.20 ID:FQVp12gN0
[ ナッシング・ライク・ザ・サン
聞いていいことなら聞くから、なんでも話してくれよ。友達だからな。
46:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:38:39.62 ID:FQVp12gN0
* * * * *
47:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:39:14.44 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「プロデューサー殿、今日の夜はほとんど満月だそうでございますよ」
48:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:40:31.07 ID:FQVp12gN0
\ ディス・イズ・イット
わたくしは、今、生きています。きらめきとともに。わたくしの意思とともに。
49:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:41:06.93 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「四行連詩集、というのがあるんだね」
50:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:41:46.21 ID:FQVp12gN0
* * * * *
二句八節を終えたところで区切りとなり、一礼するライラ。拍手が起こる。アラビア語、しかも古典表現なので言い回しも少し独特。それでも、透き通った綺麗な声に、その仕草に、表情に、ファンを魅了するだけのものはじゅうぶんにあった。
51:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:42:22.76 ID:FQVp12gN0
言葉遊びは華。重ねたり、隠したり。
「好きって気持ちを叫ぶのは、夏のお嬢さんの特権ですね。アイスクリーム、だけに♪」
それは先日事務所で居合わせた長富蓮実の言葉だった。買ってきたアイスをおいしそうに頬張るライラのそばにきて、ニコニコしていたのが印象深い。意味を汲みきれずライラが質問すると、面倒がることなく丁寧に説明してくれた。
「これは懐かしい曲のお話ですけど、それに限らず言葉遊びって本当にいろいろあるんですよ」
52:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:43:07.14 ID:FQVp12gN0
* * * * *
53:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:43:59.94 ID:FQVp12gN0
「……本当は少し、あなたを警戒していました」
胸襟を開く空気に思えた。いや、今ならもう少しだけ話せるかもしれないと、そんな気分になったプロデューサー。いささか踏み込んだ言葉だったかもとは思ったが、しかしエージェントは気にする様子でもなく。
「それは当然ですよね。わかりますよ。……今はいいんですか?」
「ここまでのプロデュース、否定をすることなく見守っていてくださったんです。たとえ立場がどうあれ感謝ですし、今度は僕が信じる限りですよ」
54:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:44:43.96 ID:FQVp12gN0
拍手と歓声の鳴り止まないステージ上で、皆で挨拶。
キラキラとした舞台から観客席を、そしてその向こうを、広がる世界を眺めるライラ。
《生きていくために大切なことは二つ。受け入れる柔軟さと、揺るぎない想い。その両方なの》
母の言葉を思い出す。もっともっと、世界を知って。たくさんのことを受け入れられるようになりたい。そして、揺るぎない想いも、伝えていきたい。自らの言葉で。
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