53:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:43:59.94 ID:FQVp12gN0
「……本当は少し、あなたを警戒していました」
胸襟を開く空気に思えた。いや、今ならもう少しだけ話せるかもしれないと、そんな気分になったプロデューサー。いささか踏み込んだ言葉だったかもとは思ったが、しかしエージェントは気にする様子でもなく。
「それは当然ですよね。わかりますよ。……今はいいんですか?」
「ここまでのプロデュース、否定をすることなく見守っていてくださったんです。たとえ立場がどうあれ感謝ですし、今度は僕が信じる限りですよ」
「ありがとうございます」
改めてプロデューサーは思う。自分だけではどうにもならないことは、信じて託す。それはお互い様なのかもしれない。自分も、ライラも、あるいはエージェントも。
「……本当は、お国からの突き上げはもっと厳しかったのでは?」
「どうでしょう。お察し、ですかね」
濁す言葉に、笑い合った二人。
「でも、それをうまく介したりコントロールしたりするのが、エージェントですから。……それに」
それに、なんだかんだ、私はライラ様のファンなんですよ。
そう話すエージェントは、どこか楽しげだった。
「光栄ですね」
担当プロデューサーとして、何よりも誇らしいことかもしれない、などとプロデューサーは感じつつ。
「あなたはプロデューサーという肩書きなのに、どこかマネージャーみたいだなと思っていました。寄り添うのがお仕事のようで。だけど今日確信しました。あなたは紛れもなく、プロデューサーです」
それも、唯一無二の。そう指摘するエージェント。
「ライラ様にとってあなたの存在は不可欠です。支えてあげてください。これからも」
また連絡を。そう言ってエージェントは一足早く退席した。
今一度、モニタ越しにライラを眺めるプロデューサー。
改めて思う。また一歩、彼女は素敵になった。でもそのきらめきの道は、まだまだこれから続いていくのだ。僕も頑張らなくては。もっともっと、光り輝く舞台へ彼女を連れて行きたい。そしてもっともっと、彼女に失望されない確かなプロデューサーでありたい、と。
「……けれど、ね」
今この瞬間くらいは、彼女に見惚れていたっていいだろう?
僕もきっと、ライラが大好きな一人なのだから。
そんなことを一人、つぶやいた。
63Res/192.16 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20