49:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:41:06.93 ID:FQVp12gN0
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「四行連詩集、というのがあるんだね」
時戻って十日前、夜の事務所。
ライラがやりたいこととして、この話を持ち出した時のこと。
「はいです」
ライラは自分でも確認をするように、丁寧に説明を始めた。
四行詩、または四行連ともいうそれ。その名の通り四行を一句として綴られた詩のことを指す。洋の東西を問わず、詩の類は古くから各地に存在し、定型を変えたり時流を取り入れたりしつつも脈々と歴史を築いてきた。ライラの地元でも、それらは確かにあったとされている。
字数から韻律、必句や禁句など様々な制約や決まり事を含むものがある一方で、自由に綴ったものまでそのありようは様々だ。そして、ライラが知るものも当然ある。
「母がむかし、何度も口ずさんでくださいました」
ライラが知るそれは詩であり歌でもあった。すなわち、母が聞かせてくれたメロディがあったのだ。それが受け継がれた伝承的な音楽なのか、母が勝手につけたものなのかはわからない。しかし彼女の心には、確かに残っていた。
そんな記憶を辿るように、思い出にそっと触れるように。ライラはゆっくりと口ずさんだ。
説明のために軽く声に出してみただけだったけれど、プロデューサーの反応は好意的だった。
「優しい、素敵なメロディだね」
ライラにぴったりかもしれない。そう彼は続けた。そう思ってくれるなら嬉しい。
「……どうしてこの曲を?」
「これはライラさんのアピールの場であり、同時に、故郷のみなさまへの宣言の場でもあります」
彼の問いかけに、きちんと目を見て言葉を返すライラ。
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