25:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:18:44.81 ID:FQVp12gN0
* * * * *
26:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:19:38.36 ID:FQVp12gN0
「ライラ、今日の動きよかったね」
「本当でございますか?」
「うん。頑張ってたのがよくわかったし、ミスもなかった……よね? たぶんファンも観ていて楽しかったと思うよ」
「えへへ、そう言って頂けると嬉しいですねー」
27:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:20:09.00 ID:FQVp12gN0
「あ、ごめん。難しく考えないで」
うつむくライラに杏がフォローを入れる。それはいいことなんだよ、と。
「杏からしたらさ、ライラは本当にたくさんのことを背負って生きてきたわけで、そこは尊敬なんだよ。すごいなって。でもそんな数奇な運命を辿って今ここにいるならさ、今だからこそできる向き合い方ってきっとあるはずだから」
「今だからこそ、ですか」
28:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:20:42.43 ID:FQVp12gN0
* * * * *
夜、ライラのもとにプロデューサーから電話があった。
29:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:21:58.03 ID:FQVp12gN0
X ステップ・アゲイン
物語が終わらなければ幸福なんだとしても、時計の針は進めるべきだと思うんだ。
30:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:23:06.91 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「……つまり、過程を見せるのはルール違反じゃないかと思った、ということかしら」
31:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:23:48.80 ID:FQVp12gN0
* * * * *
32:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:25:05.84 ID:FQVp12gN0
ライブはたおやかに、しかし確かな熱を帯びて始まった。
先日の千秋のライブとは対照的に、やや小さめのハコでのライブ。しかしここは音響的にも評判がよく、またオーディエンス全体を見渡しやすい造りであることも含め、千夏は気に入っていた。
相川千夏はここ一年ほど、己の更なる表現を求め、いろいろ新しいことに取り組んでいた。まだまだ試行錯誤だし日々勉強ばかりと彼女は語るが、その評価は少しずつ高まっている。
柔らかだけど、芯のある歌声。
33:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:25:40.31 ID:FQVp12gN0
「少しだけ、お話をさせてください」
ライブ終盤、曲間に千夏が珍しく尺を取って語りを始めた。
最近の身の回りのこと、環境の変化、変わらずいてくれる人の存在。慕ってくれる後輩のこと。
手応えがあるのはやはり嬉しいという。ファンからのレスポンス、スタッフやバックバンドからの評価。巷での知名度。そして新たなお仕事の需要の声。それは絶えず新たな取り組みや挑戦をしているからこそ、尚更感じることであると。
34:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:26:14.66 ID:FQVp12gN0
「すごかったな」
「本当ですねー」
夕方の駅前。ライブを終えて帰路につく二人。
千夏に声を掛けたかったものの、閉幕後の慌ただしさの中でうまく話すチャンスがなかった。また後日改めて気持ちをちゃんと返そう。いつもにも増して、たくさん頂いたから。そう思いながらライラは晶葉とともに歩いていた。今日の演目の感想を述べ合いつつ。
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