ライラ「アイスクリームはスキですか」
1- 20
25:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:18:44.81 ID:FQVp12gN0


     * * * * *


「ありがとうございました!」
 喝采の中、みんなで一斉にファンへ挨拶。祝日のホールで開催されたミニライブは満員御礼、滞りなく無事閉幕となった。今回はライラもミスすることなく歌い終え、踊り終えることができた。舞台袖にはけてホッと一息。タオルを持って現れたプロデューサーとハイタッチを交わす。
「いえーい、でございますよ」
 どこか間の抜けたライラのトーンと、それに丁寧に反応するプロデューサーの関係は傍目から見ていても暖かい雰囲気だった。
 ライラも手応えを実感するとともに、いろんな感情が混ざり合う自分に少しだけ驚いていた。目の前をことをミスなく終えられたという安堵感。周囲のみんなからの暖かな言葉とそれが実感できることの嬉しさ。万事順調に終えられたことによる楽屋のおおらかな空気。中心を担うアイドルのレベルの高さ。翻って、ミスはなかったけれどもっともっとレベルアップが求められる自分の技術。そして今更ながら思い出す、「自分の強みは何か」というトレーナーさんの問い、などなど。
 黒川千秋の言う通りだった。踏み出して、小さくともやり遂げることで、また見えることが表出するのだ。それは些細なステップであっても同様なのかもしれない。
「また一つ、素敵な表情を見せるようになったね」
 ライブ後の楽屋でプロデューサーから投げかけられた一言は事実を述べたにすぎなかったのかもしれない。だけど今日のライラにはとても届く言葉で。はにかんで見せつつ、ありがとうございますですよ、とライラは返した。

「あれ、ライラ一人なの?」
 ホール裏口。ライブの撤収作業があらかた済み、参加者も皆それぞれ帰路へとなったところ。声を掛けてきたのは今日のセンターを担っていた事務所の売れっ子、双葉杏だった。
「はいですー。プロデューサー殿はまだここで打ち合わせだそうです。ライラさんはお先に失礼しますです、と」
 送っていけなくてごめん、と詫びられたがライラは気にするつもりは一切ない。むしろ自分のことをまた次の企画に際して売り出すため頑張ってくれていることを知っている。感謝でございますよーとお礼を述べるばかりだった。
「そっかぁ。杏も一人なんだよね。一緒に帰る?」
「よろしいのですか?」
 お邪魔でないならお願いしますです、とライラは語った。
 杏は杏で、本人も担当プロデューサーも忙しく、今日もプロデューサーが別案件に飛んで行ったので一人で返されることになった。ちょうど今からタクシーをつかまえるところだったのだ。
「一緒に乗るといいよ」
「ありがとうございますです」




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
63Res/192.16 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice