アルコ&ピース酒井「Black Savanna」
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20: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:08:37.08 ID:z3oD1mZbo
「UMAはいんのよ」
「いや、オレUMAはいねぇと思うよ」
そんなこんなで、さらに数日経過して四月の中旬。そう、UMAがいるとか、デケェ蟻見たとか、そんな話をした日まで話がやっと戻ってくる。
21: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:09:36.37 ID:z3oD1mZbo
だけどなんで今、と質問しようとしたところ、その答えはこちらからわざわざ聞くまでもなく返ってくる。
「一ヶ月前位かな。晩酌しようと思ったら酒が無いのに気付いたから、夜だけどコンビニ行ってくるわって嫁に言って、家出たのよ。したら、その行きの道で、見たんだよ」
「白いガキすか」
22: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:10:15.54 ID:z3oD1mZbo
「だろ?そうなるよな?俺もそうなったの。なんでネズミ?って」
「まあ、はいそうですね」
「もう視線が忙しくなっちゃって。ネズミ見て、子供見て、でもっかいネズミ見て」
23: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:11:36.47 ID:z3oD1mZbo
その質問に平子さんはちょっとだけ迷って、声を潜め「信じてくれるか?」とだけ聞いてきた。
……いや……そりゃさ……アンタを信じてないことの方が多いし、そりゃさっきの話だってにわかには信じ難い事だけれど、顔がガチでやべぇ事んなってたから思わず頷くしかないわな。
近寄れ、と手招きされる。三密は……と思ったけど、そっと近付く。さらに声を静かにして、オレらふたり室内で密談。意味はあんのかねえのか、よく知んないしやる必要ねえんかもしれんけど。
ひっそり声が、地面を馴らす重機みたいに重低音でオレの鼓膜を揺さぶって、尋ねてくるんだ。
24: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:12:43.11 ID:z3oD1mZbo
「それとも───」
そしてこんなタイミングで、思い出す。
ああ、あの時の、二年前の、悪ふざけが過ぎたイカレトークを思い出す。
足はえー子供を作り出す計画、そしてその大元の計画。
25: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:13:50.82 ID:z3oD1mZbo
え?じゃあ……政府に隠れてた作戦が実行されて、それに気付いてんのがオレらだけってこと?
でもそれさ、だいたい、オレらだけ気付いたところでどうすりゃいいか分かんなくない?
世界は救えないよ、ラジオじゃ。
なにも出来ねえよ、オレらじゃ。
26: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:14:59.19 ID:z3oD1mZbo
「じゃま、お疲れ様でした。先帰りますわ」
「お疲れさん」
長い廊下を歩いていた。帰り道、不思議とスタッフもキャストも誰もいない。しんと静まっていて、だけど照明は付いてるから妙に明るくって。
27: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:15:43.84 ID:z3oD1mZbo
「そう、私達は流れ星。或いは、渡り鳥。新たな故郷を探し、彷徨う移民」
「お前……」
「そしてこれからは、ここが新たな故郷となる。地球、そして、偶然で見つけた街、東京」
28: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:17:44.43 ID:z3oD1mZbo
「!?」
女の子の顔が、驚愕に歪む。
突如、全身の細胞が弛緩し、やっと自由を取り戻す。大きく息を吸って、吐いて、オレはやっとのことで硬直から解き放たれた。
ネズミは二匹になり、その内の一匹が体をもたげて変化している、だなんてオレは見てないから知らないんだけど。
29: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:19:14.97 ID:z3oD1mZbo
という訳でことの顛末はそう言う感じだ。
後は女の子型のヤツにトドメを刺せば、こいつの仕事も終わるだろ。
キャパシティは既にオーバーしている。オレは新手のVRゲームにでも巻き込まれたのかと思いながら、眼前で起きている事件を他人事のように見ていた。
全身から力が抜ける。遂には立っていることすら出来なくなって、がくんと膝から崩れ落ちる。背後では、既に事切れたきったねぇ鼠が一匹、ただの骸になって落ちてんだろう。
30: ◆z.6vDABEMI[saga]
2020/05/05(火) 20:20:22.29 ID:z3oD1mZbo
「ッ!? あれ、オレ……?」
思わずよろける。
だけど周りは普段通りで、怪訝そうな目を向けてくるやつまでいた。え?なにこれオレバカみてぇじゃね?って周り見回す。だっれもよろけてない。あの振動なんだったん?
地震……ってわけじゃなさそうだ。もしそうなら周りだってもうちょいビビっててもおかしくなさそうだし、こんな視線向けられる必要だってないもんな。
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