44:12/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:17:55.58 ID:ldlfMP+C0
「お前……わざとか?」
「え、何が」
「余裕がないだけならいい。何か流しますよ」
45:12/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:18:53.25 ID:ldlfMP+C0
なんだまだ元気じゃないか、というツッコミも喉元を過ぎて出てくることはなく、意図が伝わってない2人はそれぞれ違う解釈をしたようだ。
ちとせはともかく千夜はどう受け取ったのか、またしても何かを手に取り車が止まるまで今か今かと構えているらしい。
すぐに次の赤信号に引っ掛かると、千夜の構えたそれは虫よけスプレーであることがわかった。
46: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:19:37.37 ID:ldlfMP+C0
13/27
「……どうぞ」
47:13/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:20:34.60 ID:ldlfMP+C0
事務所の自室ももっとこんな風になるはずだったんだろうな、と失礼にならないよう加減して辺りを見回す。改装が施されたのは結局ソファ周りと食器に留まっていた。
ほかの子の影を追っている間はここまで、私たちしか見えなくなったら私の館に替えてあげる♪ とはちとせの言だ。
自由気ままのようで好きなものを無理やり自分の色へ染め上げようとはしない、千夜を見ていてもちとせはそういう主義の持ち主だとわかる。
48: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:22:03.75 ID:ldlfMP+C0
「それが私にも、気が付いたら灯ってた。この温かな炎にあの子と、あなたと……少しでも長く焦がれていたい。今が楽しければいいってずっと思ってたのに、未来もそうだといいなって、最近思うんだ」
恥ずかしい話だけどね、とちとせは付け加える。彼女が見通し始めた未来は、そう遠くないところまでしか見ることが叶わないのだろう。
それでも、魔法の炎に照らされた明るい未来を望んでいる。それが千夜にも灯っているというなら、千夜もきっとそうに違いない。
49:13/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:23:01.11 ID:ldlfMP+C0
「でも、これだけ作れてどれも美味しいなんて、伊達にこの家のシェフは務まってないな」
率直な感想を述べるも、今の千夜には逆効果だった。なんだか頬が赤くなっているような、そうでもないような……。
「うるさい! 別に……お前みたいなのでも客は客、お嬢さまの顔に泥を塗るようなことがあってはなりませんから。それだけのことです」
50:13/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:23:48.73 ID:ldlfMP+C0
基本は仏頂面であることには変わらないが、ちとせの前でしか見せない顔を少しでも覗けている気分になる。ちとせの言う本来の千夜の笑顔がどのようなものか、いつか見てみたいものだ。
「……また変なことを考えていますね。そんなにお嬢さまに粗相を働きたいのですか」
「え、違う! 変なことなんて考えてないって!」
51: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:24:28.85 ID:ldlfMP+C0
13.5/27
52: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:26:27.57 ID:ldlfMP+C0
14/27
事務所全体で開催される大規模なアニバーサリーイベントのとある企画、そこにちとせと千夜も加わることが決定した。
53:14/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:27:05.10 ID:ldlfMP+C0
5枠の選抜メンバーの中にはあの城ヶ崎美嘉もいる。そして、他にもよく見知った名前が――
「ただいまー。あっ、ちひろさんも居るんだ。あは、ナイスタイミング♪」
ドアが開く音がすると、ちとせと千夜が戻ってきていた。
54: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:28:03.20 ID:ldlfMP+C0
15/27
2人が合宿に赴いている間、『Velvet Rose』としてではなく個人のアイドルとしてどうプロデュースしていくか、方針とその企画案を事務所の自室でひたすら立てていた。
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