51: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:24:28.85 ID:ldlfMP+C0
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そうして、エレベーターホールの前で立ち尽くしながら自分の手を見つめること、数分が経過していた。
自分でも困惑している。あいつに手を振り返したなどと、本当にどうかしていた。
お嬢さまに見られなかったことだけは幸いだ。私らしくない、と驚くかはたまたそれをネタに可愛がってくださるか。いずれにせよ面倒なことになるだろう。それよりも、
「私らしい――って、何だ?」
愛想が無く、仏頂面で、お嬢さま以外の人間に興味を持たないのが私だったとしたら。
この手は一体、誰が、誰のために振られたというのだ。
……私は、私のことすら知ろうとしていなかった。わかったつもり、いや、無かったつもりで生きてきたから。
私は何者なのか。お嬢さまの僕、それ以外の役割があっていいのだろうか。
アイドルの白雪千夜、としての私は嫌いじゃない。お嬢さまと並び立てる、新たな役割を与えられたことには感謝している。
では、ただの白雪千夜はどうだろう。この名前しか持っていないと思っていた私は、何かを望み始めている?
答えは闇の中だ。それでも私は、忘れるまでは……考えてみてもいい。自分のことや、これからのことを。
この胸に灯り出した炎が、私の中の闇すらも照らしてくれると、信じてみたくなったから。
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