白雪千夜「私の魔法使い」
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53:14/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:27:05.10 ID:ldlfMP+C0
 5枠の選抜メンバーの中にはあの城ヶ崎美嘉もいる。そして、他にもよく見知った名前が――

「ただいまー。あっ、ちひろさんも居るんだ。あは、ナイスタイミング♪」

 ドアが開く音がすると、ちとせと千夜が戻ってきていた。
 昼食は他のメンバーたちと別行動となったのか尋ねると、そうではないらしい。

「お嬢さまがどうせならと、私たちだけでは無駄に広いこのスペースを利用して、昼食を取らないかお誘いなされたのです。……逃げられてしまいましたが」

「んー、美嘉ちゃんだっけ? 抜け駆けはずるいから、って顔赤くして慌ててどこか行っちゃったの。あの子を追い掛けてった子もいて、その流れで今日のランチは別々。最初は乗ってくれそうな顔してたのに、ねぇ知り合い?」

 美嘉の行動がどんな風だったか、その場にいなくてもありありと想像できて思わず笑みがこぼれた。

「あれで結構シャイなんだ。あまりからかってやるなよ?」

「……ふぅん?」

「へぇ……」

 美嘉への接し方をアドバイスしたつもりが、心なしか冷たい視線を浴びせかけられている。ちとせも千夜もどうしてしまったのか。

「……私たちも別なところでご飯食べよっか、千夜ちゃん」

「そうですね、それがよろしいかと。千……ちひろさんもいかがでしょう」

「いいねそれ♪ どう、ちひろさん?」

「私もお邪魔していいんですか、ありがとうございます♪」

 2人の元へにこやかに歩み寄っていくちひろから敵意こそ感じられないが、笑顔で見捨てられた気がしてそれはそれでショックである。

「ちひろさんまで!? ……あの、俺は?」

「霞でも食べてろ。では、行きましょう」

 千夜の冷たい一言を残して、ドアは閉まった。
 4人でも閑静な広さの部屋に、輪をかけて静寂が訪れる。ささやかな冷房の起動音も何の慰めにもならない。

「……。もっと寂しくなりましたよ、ちひろさん……」

 さっきは答えてくれた人も、もうそこにはいなかった。







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