54: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:28:03.20 ID:ldlfMP+C0
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2人が合宿に赴いている間、『Velvet Rose』としてではなく個人のアイドルとしてどうプロデュースしていくか、方針とその企画案を事務所の自室でひたすら立てていた。
もちろんまだまだ駆け出しであり、ユニットで動かせた方が2人にとってもやりやすいのは判り切っている。お嬢さまとその従者、キャラ立ちもはっきりしていて彼女たちを知らない人たちに覚えてもらいやすい。
ちとせとの約束もあるが、プロデューサーとしてただ単にアイドル黒崎ちとせとアイドル白雪千夜、それぞれが輝いているところを見たい。補い合う段階からその次へ、どこにいたって一人で輝けるように。
「オーディション、今ならどこまで受かるかな……ん?」
一息つこうと伸びをしていたところへ携帯電話が着信音を鳴らし、誰からのものかディスプレイを確認する。
白雪千夜、と文字が浮かんでいる。発信者は千夜だった。仕事に関するもの以外で連絡が入ったことはこれまで一度もない。合宿地から何用だろうか。
「えっと、はい。もしもし」
『白雪です。どうも』
「どうしたんだ、何かあった? まさかちとせが倒れたとか?」
『……。お嬢さまは無事だ。お前に用があるのは私です』
「あ、うん。それはよかった、千夜がどんな用だって?」
『電話では話しにくいので、こちらに来ていただけると助かります。そう遠くは離れていないはずですが』
「あー……それは問題ないんだが」
選抜メンバーで合宿しているのだから、美嘉たちもそこにいるのだ。美嘉には先日の件もある手前、こちらから伺うことに抵抗がなくもない。
せっかく頼ってくれている千夜を無碍に扱うわけにもいかないが、はたしてどうするべきか。妥協案を探ってみる。
「電話じゃ駄目ってどんな話?」
『大事な話です』
「…………」
『…………』
「えっ、終わり?」
『他に何か必要でしょうか』
話しにくいと言っている以上、中身を詳らかに話せないのはわかる。それにしたってガードが堅いような気もするが。千夜からの大事な話って何なのだろう。
「うーん」
千夜からの大事な話、というワードの前に優先すべき事項は現状見当たらない。
覚悟は決まったが、ただ返事をするのもつまらないので難色を示している素振りをみせてみる。
つべこべ言わず来い、と冷たく言い放たれるかと思いきや、聞こえてきたのは自嘲めいた乾いた笑いだった。
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