白雪千夜「私の魔法使い」
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55:15/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:29:16.71 ID:ldlfMP+C0
『ふっ……所詮私などその程度ということですか。やはり私に価値なんて……なかった』

「わーーー、待った待った!! 落ち着け、ふざけ過ぎた謝る! 今から行けばいいのか? 千夜、聞いてる!?」 

 そのまま電話を切られそうな雰囲気に耐えられず、挽回しようととにかく引き留めるためにまくし立てる。
 通話は…………繋がっている。どうやら千夜に届いていたようだ。

『聞いてますよ、必死な声でしたね。つまらない真似をするからだ。ばーか』

「ぐぬぬ……やるようになったじゃないか、千夜」

『お前が成長していないだけでは? ふふっ』

 今度は違う意味合いの笑い声が微かに聞こえてきたが、気のせいかもしれないので下手に触れずにおいた。

「で? 俺はいつ会いに行けばいいの」

『夕食前の自由時間、くらいしか他の人たちの目を盗める機会はありません。……今は会いたくとも会えない方がいるのでしょう?』

「うん……ごめん」

『謝るのならその方にしてください。出来れば早く来ていただけると助かります』

「わかった。明日にでも行くよ。今日はちょっと出れそうにないんだ」

『わかりました。17:30頃外に出ますので、見つけてもらえれば』

「オッケー。明日な」

『……』

「ん? それじゃあ切るぞ」

『……あの』

 電話越しではあるが、それはいつになくしおらしい声だった。

『来てくれて、感謝します。……では』

 千夜の方から通話を切られたのを確認し、携帯電話を閉じて再び仕事に取り掛かる。
 一息つこうとしていたことなど忘れ、他に誰もいない静かな部屋ではキーボードを叩く音だけが軽快に鳴り続けた。






 約束の時間も迫り、ようやく陽が傾きかけ始めた頃へ虫たちの混声合唱が鳴り響く中、時間前に合宿所へとたどり着く。関係者とはいえ目立たないよう、敷地内へは入らず様子見だ。

 ここへは何度通ったか覚えておらず、身体が最適な道のりを覚えていたため暑さを除けば特に苦労はしなかった。

 これからなるべく人目のつかないところで、千夜からの大事な話を聞かなくてはならない。近くに良い場所はあっただろうか。



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