白雪千夜「私の魔法使い」
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56:名無しNIPPER[sage]
2020/02/04(火) 20:30:24.55 ID:ldlfMP+C0
 周辺の地理に思考を巡らせていると、レッスン着の千夜が合宿所の玄関から目だけで辺りを探りながら出てきた。

「千夜、こっちだ」

「……どうも。話は後で、協力者がいますのでこちらへどうぞ」

「え? そっちって、中に入るのか?」

「急げと言っている」

 問答無用とスーツの袖を掴んで引っ張る千夜にされるがまま、合宿所の中へと押し込まれる。

 宿泊施設自体は旅館のそれで、玄関口で脱いだ靴を下駄箱に置くことも、ましてスリッパも履くことがかなわず連れ去られた。千夜は履いてきたものをそのまま使用しているようだ。

 そうして宿泊施設の中を迷路のように遠回りしてから鍵のかかった部屋に通され、最後に誰にも見られていないことを確認していた千夜が、中から鍵をかけてようやく部屋の奥へと入ってくる。

 この部屋に寝泊まりしているのか、隅にはアイドルたちの荷物がまとめられている。ここは5人で使われているらしい。
 夕陽の差し込む窓辺からは光をきらきらと反射する海が一望できた。

「……拉致されるとは思わなかったよ」

「お前が堂々と来られないのだから仕方ないでしょう。……はぁ、何故私はこんなことを」

「ここまで徹底しなくてもさ。そういや協力者って?」

 ちとせでないことだけは確かだろう。だからといって他のメンバーに千夜が頼み込むとも思えない。

「……不覚にも昨日、お前と話しているのを見られていたようで。頼みもしていないのに手伝ってくれる、と。おかげで助かりましたが」

 聞かれていた、ではなく見られていたというところに引っ掛かりを覚えるが、関係のない話をする時間も惜しい状況だ。とにかく用件を聞き出さなくては。

「それで、どんな話があって俺を呼んだんだ?」

「……」

 近場の座布団を手繰り寄せ、落ち着いて正座する千夜。姿勢を正してからこちらへ向き直った。
 プロデューサーも近くにあった座布団の上で胡坐をかこうとし、千夜に合わせて正座することにした。たまにはこうして向かい合って話すのもいいだろう。

「? 楽にしていればいいものを」

「まあ、なんとなく。じゃあ始めようか、大事な話ってやつを」

 千夜はどう切り出すか一瞬だけ迷いをみせてから、すぐに話し始めた。

「簡潔に述べます。私をどう思っていますか」

「…………」



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