白雪千夜「私の魔法使い」
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57:15/27  ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:31:38.03 ID:ldlfMP+C0
 大事な話と聞いてそのセリフを聞かされてみれば、予想される展開はかなり絞られる。ただ目の前の少女が千夜なのでどうにか異なる可能性を模索出来た。
 とりあえず、打開するためにも素直に返してみることにした。

「最近たまに可愛いと思える時が増えた、かな」

「ふざけてるのか」

「そういう事じゃないの!?」

 何かおかしいと勘付いた千夜が、ようやく言葉がいろいろ足りていなかったことに思い至ったようだ。

「私が聞きたいのは、アイドルとしての白雪千夜をお前はどう見るか、だ。他にあるとでも?」

 語気は強めでも自分に非があることは理解しているらしく、目は逸らされている。

「最初からそう言えばいいのに……。しかし俺に聞くのか」

 晩餐会の時に千夜のことを知るためちとせを頼ったこともあったが、状況としては同じだ。プロデュースしている本人に聞くのが早い、そう判断したのだろう。

「今回のイベントでは、各々の色、個性、そういったものが求められている。だから聞きました」

「千夜は充分に個性的だと思うけどなあ」

「……よくわからない。私に価値はなくても、アイドルとしての私は……少なからず価値を持っているのかもしれない。お前のせい、おかげ? どちらでもいいか」

「おかげと言って欲しいとこだけど、まあいいや。個性なあ」

 己を無価値と蔑ろにしてきた千夜が、少しずつ見つめ直そうとしてくれているのだ。電話越しでは済まされない、確かに千夜にとってはおおごとで、だいじな話だった。

「ここには私の他にちとせお嬢さまや、美しい方、活発な方、穏やかな方――色とりどり揃っています。そこに私を添える意味や、価値を……お前ならわかるはずだ」

「うーん……俺が教えるのは簡単だけど、はいそうですかって納得出来る?」

「……それは、そうですが」

「今回はちとせと一緒だけど、ちとせの僕としてじゃなくたって、千夜はもう立派にアイドルだよ。それは俺が保証する。保証させるのが仕事だから」

「…………」

「あまり気にしないでいい。自分の価値を決めるのが自分だけじゃないのはわかっただろう? それと一緒だよ。周りから創り上げられたイメージがあって、それに応えるのもアイドルの仕事さ」

 城ヶ崎美嘉がカリスマギャルとしての名声を維持しているのは、本人がファンの前でそうあろうとしている努力もあってのものだ。
 もっとも、彼女なら1人でもその高みに昇りつめられたかもしれないが。美嘉がそうありたいという願いを聞き、プロデュースで後押ししたに過ぎない。

「それでこそ偶像、というわけか。私のイメージ……? 私に求められているもの……」

 うつむき加減に拳を軽く口に当て、千夜が考え込む姿勢に入る。無価値などと言わず自身がこうありたいという願いを、千夜にも是非持っていてほしい。
 合宿所での他アイドルたちとの交流を通して、何か思い当たることがあればいいのだが。




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