白雪千夜「私の魔法使い」
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48: ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:22:03.75 ID:ldlfMP+C0
「それが私にも、気が付いたら灯ってた。この温かな炎にあの子と、あなたと……少しでも長く焦がれていたい。今が楽しければいいってずっと思ってたのに、未来もそうだといいなって、最近思うんだ」

 恥ずかしい話だけどね、とちとせは付け加える。彼女が見通し始めた未来は、そう遠くないところまでしか見ることが叶わないのだろう。

 それでも、魔法の炎に照らされた明るい未来を望んでいる。それが千夜にも灯っているというなら、千夜もきっとそうに違いない。

 そんな中で、ちとせは出来るならいなくなるつもりなんてないのだ。
 生きがいを持つことで前を向いて生きていける。ちとせはその身に灯った炎から、自分が千夜のためにしてきたことが間違いじゃなかった、そう思えるようになったという。

「……なんてね、サービスしすぎちゃったかな。千夜ちゃんともども、これからもよろしくね。素敵な魔法使いさん」

 照れたようにはにかむちとせ。そんな笑顔は珍しくもあり、不意に心を奪われそうになる。ちとせのことだってまだまだ知らないことばかりだ。

「ああ、任せてくれ。絶対にアイドルをもっと楽しませてやるからさ」

「あは、よく出来ました♪」

 そこへ、折を見ていたのか千夜がやってきた。

「お嬢さま、食事の用意が出来ました。今宵の晩餐会、どうぞお楽しみいただけますよう」







 晩餐会とは銘打っているものの、勝手に抱いていた豪奢で高級感の溢れるイメージとは違い、千夜の料理はとても家庭的だった。

 加えてちとせのために栄養やカロリー、彩りまでも考え尽くされているそれらが美味しくないわけがなく、味付けがちとせ好みになっているとして舌に合わないなんてことはなかった。

「美味い……泣きそう。にしても多くない? 量というより種類が、大変だったろうに」

 3人しかいないのにもはや和洋折衷取り揃えたビュッフェである。満漢全席といってもいい。

「食材を余すことなく使いましたので、問題はありません」

「美味しいし、いろいろ食べられて嬉しいからいいけど。2人でもこんな感じ?」

 小食で美食家なちとせを満足させるため、とも考えたがちとせの細くなった目を見るにどうやら違うようだ。

「魔法使いさんの好きな食べ物、ずーっと見ててもわからなかったんだよね?」

「お、お嬢さま!?」

 慌てふためく千夜をお構いなしに、ちとせは愉快そうに続ける。

「視線感じなかった? お仕事で一緒に居ることが増えて、せっかく食事時に居合わせることも増えたのに。あなたいつもコンビニのパンとかでしょ?」

「……言われてみれば。あっちいけって意味じゃなかったのか」

 客人としてもてなそうとするなら、好みの食べ物は外せないだろう。苦手な食べ物はもっての外だ。千夜なりに好みを把握しようとして、まるでヒントが得られないから数で誤魔化した、と憶測がついた。



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