44:12/27 ◆KSxAlUhV7DPw[sage]
2020/02/04(火) 20:17:55.58 ID:ldlfMP+C0
「お前……わざとか?」
「え、何が」
「余裕がないだけならいい。何か流しますよ」
「何が流れてくるの!?」
「……退屈なので、ラジオでも適当に流します。何か問題でも?」
ちとせの隣ではなく助手席を選んだだけあって、いっそ千夜の方が運転も上手いんじゃないかと錯覚するくらいには手慣れた素振りをみせている。
「お前がだらしなさ過ぎるのです。いずれ運転免許は使用人としてお嬢さまのためにも取得するつもりですが、可能な限り時期を早めるべきか……?」
アイドルに運転まで任せていては立つ瀬がない。思い返せば、運転を不安視こそされ褒められた覚えなどなかった。
魔法使いと呼んで貰えるうちに、馬車を操る御者役くらいはこなせるようになっておこう。隣から突き刺さる視線をかわす意味でも、ひっそりと誓いを立てる。
「魔法使いさぁん、次のお休みっていつだっけ……?」
「……左ポケット」
「は?」
期待も空しく、千夜には通じていなかった。
「手帳、あるから」
「そういうことか。……これですね」
運転に集中しているプロデューサーに代わり、手帳のページをめくっていく千夜。スケジュールは予定記入欄にメモしてある。
「……これの通りなら、来月まで休日はありませんね」
「えーーっ!? ……ぱたり」
「お嬢さま!? 気をたしかに、くっ……助手席からでは。お前ぇ、お嬢さまを謀ったな!」
ちとせが動かなくなったところで赤信号となり、ようやく口を挟む余裕が生まれた。
「来月の後半、2人であるイベントに合流してもらうことになりそうなんだ。だから今月の残りは耐えてくれ、ちゃんと来月前半は空けてあるから!」
ピリピリしながら千夜が再び手帳をめくると、嘘ではないことを確認出来たからか何とか許された。ポケットに手帳を戻す動作が少々、いやかなり雑ではあったが。
「お嬢さま、こいつの言う通りでした。今しばらく辛抱なさってください」
「…………うん、頑張る」
聞こえていたようだ。ちとせが倒れてしまう前に、移動の負担を極力減らすべきだろう。
となると家に直接送り迎えすることになるが、背に腹は代えられない。赤信号が青に替わるのを目視し、早口気味に質問した。
「ちとせと千夜の家ってどの辺だっけ?」
「……?」
「え、帰っちゃうの?」
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