75: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:23:47.78 ID:nY0iWbpOO
「肇は知らないかもしれないけど、昔俺がプレイしたゲームに真実の姿を表す鏡があったんだ」
「真実の姿、ですか?」
「言ってしまえばモンスターがいくら上手に化けてしまおうが、コイツが写せば立ち所に真実の姿を晒すってやつなんだけど」
76: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:24:18.45 ID:nY0iWbpOO
思いもよらぬ言葉が飛んできた為びっくりして声が大きくなってしまう。なんだなんだとみんなが俺の方を見る。
「う、現川焼!」
「ええ? き、キツツキ?」
77: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:24:53.47 ID:nY0iWbpOO
ふと頭に浮かんだ推測を言うべきか悩んだが、とりあえず前に進むためにも話した方が良さそうだ。
「いや、ほら。古い鏡ってことは長い年月の間に魔翌力やら妖力がなくなっちゃったってことでしょ? つまりなんらかの方法でその魔翌力を貯めなおせば……例えば」
「例えば?」
78: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:25:49.43 ID:nY0iWbpOO
「うん……? 卯月?」
「はい? 呼びまし」
「そうだ! 月だ!」
79:11 ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:27:18.39 ID:nY0iWbpOO
それからどれほどの朝と夜がやってきただろうか。満月の夜はなかなか訪れず、その度に俺と肇はため息をつき眠りにつく。そして朝が来ては銃声と変な掛け声が飛び交う中夜を待ち、空を見上げて落胆する。枕につくときには明日こそ、と満月の夜が来ることを心から願うのだ。
「ふぅ……」
スイカ割りをしたり捉えたはずの真鯛が暴れたり夜はスイカの皮の胡麻和えが意外に美味しかったり。夏休みの1日もそれが3日に一度訪れるのなら秋は来ずとも飽きが来てしまう。子供の頃は永遠に夏休みがあれば良いなと思っていたし、大人になった今でもずっと休みたいと思っていた。だけど結局のところ、休みというのは勉学や労働という生活の基盤たる義務の上に成り立つものだ。今ある仕事の日を全部休みにしたって行き着くところはずっと仕事をしているのと同じこと。終わらない休日なんて、いずれ苦痛に変わってしまう。この世界を仕掛けた犯人はそれを理解していないのだろう。良かれと思っていたのかは分からないけど、迷惑な話……
80:一旦ここまでにします ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:30:55.47 ID:nY0iWbpOO
「アッハッハ、まるで休日のお父さんとお母さんでありますな!」
「亜季さん!? もうお父さんとお母さんだなんて……」
「おーい、響子ー? 響子さーん?」
81: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 07:58:27.64 ID:sHF766Jg0
五十嵐響子がどこにもいない。そのことに気付いたのは朝ごはんの時間になっても響子の姿が見えなかったから。あれだけご飯を作ることに楽しみの生きがいを感じていた彼女が何も残さずいなくなるなんておかしい。部屋の中にも入ったけど荒らされた形跡もなく、それどころか寝る前に飲んでいたのであろう少し残ったお茶のペットボトルがつい数時間前まで普通にいたことを示唆していた。
「響子ちゃん、どこに行ったんでしょう?」
「分からないけど……外、って事はないと思いたいな」
82: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 08:00:26.79 ID:sHF766Jg0
「肇、少し良いか?」
「プロデューサーさん。ちょうどよかった、私も話したいことがあったんです」
家事担当だった響子がいなくなったから必要なものを買い出しに行くと言う名目で俺と肇は車を走らせた。吹雪の中車を走らせるのは危険だったが、他のみんなに聞かれるわけにもいかないので致し方ない。肇にカイロを渡すと加蓮と同じようにシャカシャカ振り始めた。
83: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 08:02:32.41 ID:sHF766Jg0
待ち焦がれた満月の夜は案外早くやってきた。2日後の夏の夜、セミの鳴き声が響く中まん丸とした満月が空に浮かんでいた。
「悪いね、ちょっと話があったんだ――加蓮」
呼び出された加蓮はこれから寝るところだったのか寝巻き姿だ。夏の夜の暑さで少し汗をかいているみたいでまたシャワー浴びなきゃと言っている。
84: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 08:04:34.96 ID:sHF766Jg0
「な、なんで私が偽物だってわかったの……?」
「それは俺の灰色の脳が」
「プロデューサー殿、素直に総当たりで試して最後に残った加蓮殿が引っかかっただけと話したほうが」
85: ◆d26MZoI9xM
2019/12/16(月) 08:07:03.79 ID:sHF766Jg0
「あら? そんなに驚きませんでしまか? もっと大袈裟なリアクションを期待していたんですけどね。例えば……」
「アンビリィバボゥーー!! まさか加蓮さんが楓さんだったなんてショックだぜーー! ……みたいな? フヒッ」
「って正体は輝子さんだったんですね? って違いますよ! 黒幕はこの、カワイイボクですからね!」
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