92:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:32:26.87 ID:1/ZkFkMM0
* * *
「はぁぁ……ハラショー……」
上野にある美術館。
93:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:34:08.12 ID:1/ZkFkMM0
あのフェス以降、私達の仕事は劇的に増えた。
私でさえ、それまではグラビアだけだったものが、最近は歌う仕事の方が多くなっている。
346プロの他のアイドルがパーソナリティを務めるラジオ番組のゲストに呼ばれたり、あろうことかテレビに出たこともあった。
それをこなすためのレッスンも比例して増えたため、ますますお嬢様のために費やす時間が無くなっていく。
94:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:35:46.87 ID:1/ZkFkMM0
私は呼んだ覚えはない。なぜか、アーニャさんと凛さんが誘ったのだ。
しかし、なかなかどうしてコイツも、絵画に対する造詣が深いように見える。
畑は違うとはいえ、アイドルという芸術を作り上げるものとして、一定の教養は持ち合わせている――ということか?
95:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:36:58.95 ID:1/ZkFkMM0
「今日は、ありがとう千夜。
アーニャだけじゃなくて、私まで誘ってくれて」
アイツとアーニャさんが私達を置いて先に行ってしまったのを見計らい、凛さんが改めて私に声を掛けた。
96:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:39:39.44 ID:1/ZkFkMM0
どうしても分からなかった。
あの『GOIN’!!!』で、私と凛さんのポジションは、確かに隣同士ではあった。
それに、一緒にレッスンを重ねてきていたし、複雑なライン移動もピッタリ呼吸を合わせてこなせるまでになっていた。
97:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:40:53.93 ID:1/ZkFkMM0
――?
理由になっていない。凛さんともあろう人が、随分と具体性に欠く、ナンセンスな回答だ。
「そういうものとは?」
「だからさ……」
98:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:42:41.94 ID:1/ZkFkMM0
彼女に倣い、私もそのバレエダンサーが描かれた絵画を見上げる。
ドガだろうかと当たりをつけてみると、案の定そうだった。
たぶん、思考の置き場に困った彼女が、適当な対象としてこれに視線を預けているに過ぎないと思った。
99:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:44:03.05 ID:1/ZkFkMM0
「分かりました」
「ほんとに分かってる?」
「いえ、分かっていません」
100:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:45:07.66 ID:1/ZkFkMM0
そう――付き添える時間を割かれているのは、私の方だけではない。
最近では、お嬢様の方も、ご不在の時が多くなっている。
長らく候補生の身に甘んじていたが、アイドルとしていよいよ始動し始めたということだろうか。
101:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:47:48.78 ID:1/ZkFkMM0
彼女が顎で指した方を見ると、アイツとアーニャさんだ。
通路の脇に退いて、電話で何やら話しているアイツを、アーニャさんが不思議そうに見つめている。
ほどなく電話が終わり、その場に合流した私達の下へ、アイツが戻ってきた。
102:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:49:21.31 ID:1/ZkFkMM0
「何か、千夜とプロデューサーのやり取りってさ……ヘンだよね」
「ヘン?」
首を傾げる私に、凛さんは苦笑しながら手を振るう。
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