白雪千夜「足りすぎている」
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93:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:34:08.12 ID:1/ZkFkMM0
 あのフェス以降、私達の仕事は劇的に増えた。
 私でさえ、それまではグラビアだけだったものが、最近は歌う仕事の方が多くなっている。
 346プロの他のアイドルがパーソナリティを務めるラジオ番組のゲストに呼ばれたり、あろうことかテレビに出たこともあった。
 それをこなすためのレッスンも比例して増えたため、ますますお嬢様のために費やす時間が無くなっていく。

 本来、あまり望ましいことではないのだが――。
 そのような生活の中で得た貴重なオフを、お嬢様のためではなく、こうして他の人達と過ごすという選択をしている辺り、いよいよ私はおかしくなってきている。

「チヨ、これは何ですか?」

 余計な思考に耽るのをまるで茶化すように、アーニャさんはもう次の作品の前にいる。
 楽しそうだ。凛さんも、悪い気はしていないように見える。
 誘って良かったと思う。

 ただ――。


「セザンヌのようですね」

 後ろから、黒くて大きい定規が私のそばを通り過ぎた。
 アイツの位置から、おそらく作品の名前までは判読できていないはずだ。

「オォ〜〜。プロデューサー、すごいです。知っているんですか?」
「過去に、見覚えがあった気がしたもので」



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