白雪千夜「足りすぎている」
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98:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 00:42:41.94 ID:1/ZkFkMM0
 彼女に倣い、私もそのバレエダンサーが描かれた絵画を見上げる。
 ドガだろうかと当たりをつけてみると、案の定そうだった。
 たぶん、思考の置き場に困った彼女が、適当な対象としてこれに視線を預けているに過ぎないと思った。


「自分でも信じられないような力が、急に働くんだ。
 それはたぶん、このステージを成功させたい、絶対失敗なんてさせたくないっていう、潜在的な強い気持ち……。
 あるいは、お客さんからもらえる力もあるのかも知れない。
 美嘉も言ってたけど、ステージって、私達アイドルだけじゃなくて、お客さん達と一体で作るものらしいから」

 かぶりを振って、顔を上げる。
 その真っ直ぐな横顔は、適当な言い草で私の質問をやり過ごそうとしているのではない、彼女の真摯な想いが感じられるものだった。


「強いて理由があるんだとしたら、そんなところかな」



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