218:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:14:29.72 ID:1/ZkFkMM0
「玲音さんねー、ゆいもこないだちょこっとだけ話したけどチョーいい人だったよ!」
「えっ、唯ちゃん話したの!? それアタシも呼んでよ、いいなぁ!」
「お姉ちゃんも話したことないんだ?」
「当たり前でしょ! ずーっと雲の上の人なんだから」
「あ、そういやあたしも「実家の和菓子ですー」って差し入れに行ったけどめっちゃ面白い人だったよ玲音さん」
219:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:23:31.66 ID:1/ZkFkMM0
「千夜は行かないの?」
杏さんがお決まりのソファーから身じろぎもせず、テーブルの上に残ったお菓子におざなりに手を伸ばす。
きらりさんがそれを、彼女の方に引き寄せてあげた。
220:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:24:44.96 ID:1/ZkFkMM0
「あーそれ杏が一番分かんないヤツだ」
「あなたに理解してもらいたいとは言っていません」
「知ってるよ」
同じく部屋に残ったアーニャの、クスッと笑う声が隣で聞こえる。
221:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:27:59.00 ID:1/ZkFkMM0
「李衣菜チャン! 出口の方を抑えといて!」
「えぇっ!? で、でも出口あっちとこっち二つあるけど!?」
「凜ちゃん、あっちの出口をお願い! 卯月ちゃんは私達と手分けして下の階から当たりましょう!」
「はい! 頑張りますっ!」
222:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:34:22.90 ID:1/ZkFkMM0
「……まぁ、そういう事でもいいです」
「ウラー♪」
まったく、彼女の相手は楽しいものの、たまの不意打ちが心臓に悪い。
知れず嘆息しながら、事務所を出ようとした時だった。
223:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:39:40.57 ID:1/ZkFkMM0
いつも相手への配慮を欠かさないアーニャも、怪訝そうに首を傾げている。
この人に匂いフェチなる嗜好があることは知っていたが、つくづく理解できない領域だ。
ただ、この人は今、出入口ではなく、1階の廊下から歩いてきて私達に声を掛けてきた。
彼女の歩いてきた先には、回遊して外に出入りできる扉はあるが、普段は通用されていない。
224:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:41:49.55 ID:1/ZkFkMM0
「!!? だっ!?」
肺の中の空気が一気に押し出され、地上に打ち上げられた魚のように呼吸の仕方を忘れてむせてしまう。
「チヨ、大丈夫ですか!?」
「にゃははー、反応しすぎー♪ お別れの挨拶代わりにハグくらい、ルーマニアでも普通でしょー?」
225:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:44:44.55 ID:1/ZkFkMM0
あの人が、誰かに甘えるなどと――。
強いて、おじさまにはそういう態度を取る時も頻繁にあったが、いくら奔放とはいえ、赤の他人にそこまで心を開くとは思わなかった。
「常務も優しそうに腕を回してて、これちょっとイメージ崩れちゃわない?って心配になっちゃったけど、止めるのもヤボだしねー。
何ていうか、ラブを育むっていうより、うーん、たぶんあたしにはよく分かんない領域だけど……」
226:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:47:23.89 ID:1/ZkFkMM0
志希さんは、度が過ぎた冗談は言うが、嘘はつかない人だと認識している。
しかし、果たして額面通りに受け取って良いものかどうか――。
「チヨ」
「何でしょう」
227:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:49:23.77 ID:1/ZkFkMM0
とはいえ、私はあの人に良い印象を持っていない。
医務室で初めて対峙して以来、何も話をする機会が無かった。
良い印象を持っていないのは、向こうも同じか。
いや、そもそも私のことなど歯牙にも掛けていないだろうな。
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