白雪千夜「足りすぎている」
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223:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:39:40.57 ID:1/ZkFkMM0
 いつも相手への配慮を欠かさないアーニャも、怪訝そうに首を傾げている。
 この人に匂いフェチなる嗜好があることは知っていたが、つくづく理解できない領域だ。

 ただ、この人は今、出入口ではなく、1階の廊下から歩いてきて私達に声を掛けてきた。
 彼女の歩いてきた先には、回遊して外に出入りできる扉はあるが、普段は通用されていない。

「もう、お目当ての匂いは摂取できたのですか?」

 私が尋ねると、彼女は猫のような鳴き声をもって肯定した。

「と言っても、もうレッスンは終わってたんだけどね。
 ちとせちゃんと常務が何か話をして帰るところ。邪魔しちゃ悪いと思ったから、隠れて観察してたよー♪」

 ――!
 ちとせさんと常務の話、か――。

「にゃっはっは、千夜ちゃんすっごいキョーミ津々」
「! ……無理にお話いただかなくとも結構です」
「じゃー、あたし的に無理じゃないから話してあげるね♪
 安心してよ、千夜ちゃんが気にするようなデリケートな内容は無いから。どんとまいんど、ていくいっといーじー」

 この人は帰国子女で、ちとせさんやアーニャと同じくらい英語が堪能だ。
 しかし、人をおちょくる時はわざと雑な英語を話すことを、私は知っている。
 どうせこの先に話す内容もくだらないのだから、付き合うだけ無駄なのだが、不和を残すのも面倒だ。

 適当に聞き流して帰ろう。そう思っていた。


「ちとせちゃんと常務がね、抱き合ってたよ♡」



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