白雪千夜「足りすぎている」
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221:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 21:27:59.00 ID:1/ZkFkMM0
「李衣菜チャン! 出口の方を抑えといて!」
「えぇっ!? で、でも出口あっちとこっち二つあるけど!?」
「凜ちゃん、あっちの出口をお願い! 卯月ちゃんは私達と手分けして下の階から当たりましょう!」
「はい! 頑張りますっ!」


 夜も遅くなってきているのに、20人以上もの現役アイドル達がドタドタと事務所内を走り回る光景は、実にシュールだ。
 それがトップアイドルを探すためだというのだから、全くもって度し難い。

 彼女達を一瞥し、私は寮へと足を進めた。


「チヨ……チトセに会いに行かなくて、良いのですか?」
 アーニャが心配そうに尋ねる。

「先ほど、杏さんに答えたとおりです。
 特に意味を成さないことなのかも知れませんが……これは、私のけじめです」

「ケジメ……アー……」

 言葉を探すときの彼女の相槌が聞こえた。
 しまったな、これは少し説明するのが面倒な言葉だ。
 そう思っていると――。

「会えない時間が愛を育てる、ですね?」

 予想外の角度から放り込まれた言葉に、ドキッとしてしまった。
 意味を知ってか知らずか、当人は横からヒョイと身を乗り出し、あどけない笑顔を私に振りまいてくる。



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