21:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:23:56.46 ID:QXbKSZYO0
「そうは言っても、私はあなたが導いてくれることを期待しているよ?」
テーブルに肘をのせ、悪戯っぽくお嬢様が微笑みかける。
「プロジェクトの名が示すとおり、千夜ちゃんをお姫様にしてあげてね、魔法使いさん♪」
22:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:25:14.44 ID:QXbKSZYO0
ふと、言葉を止めた。
今の私には、考えることが一つだけある。
対等――従者として生きてきた私には、対等といえる立場の相手が久しくいなかったことに気がついた。
そういった者には、どう呼称するのが一般的なのか。
23:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:31:50.54 ID:QXbKSZYO0
* * *
「ほっ! お、やっ……とぉ! ほぁ!」
「未央」
「ふんわぁぁっ!?」
24:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:35:53.67 ID:QXbKSZYO0
シンデレラプロジェクトには、総勢15人のアイドル候補生がいる。
元々は14人で構成される予定だったが、急遽増員が決まったらしい。
その増員枠に、収まったのは私。
お嬢様はというと――。
25:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:46:46.09 ID:QXbKSZYO0
あてがわれた女子寮は単身用であり、お嬢様と私の部屋は隣同士にしてもらえた。
もはやお決まりのように、お嬢様は私の部屋に入り、ニコニコしながら今日の出来事を聞き出そうとする。
「今日は、本田さん、渋谷さん、島村さんと一緒でした。
ボーカルレッスン、ダンスレッスンをそれぞれ2時間ほど受け、私へのトレーナーの評価は、可も無く不可も無くといったところです」
26:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:51:04.93 ID:QXbKSZYO0
候補生は、私と同年代の人達が多かった。
三村さんが事務所に持ち込んだクッキーに、私が紅茶を用意すると、皆さんはとても喜んでくれた。
「甘美な愉悦がこの身に宿り、我が魔力の高まりを感じるわ!」
27:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:53:00.55 ID:QXbKSZYO0
それまで静かにソファーに腰掛けていた渋谷さんが、立ち上がった。
「二人が撮影してるの、スタジオ棟の2階でしょ」
「おっ? なんだなんだしぶりーん、抜け駆けは良くないぞー♪」
28:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:54:29.89 ID:QXbKSZYO0
「……えぇと、千夜、さん?」
スタジオへ向かう途中、長い廊下を歩きながら、渋谷さんがこちらの機嫌を伺うように口を開いた。
しばらく無言の状態が続いており、彼女が先に根負けした形になる。
29:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:58:02.70 ID:QXbKSZYO0
少し考え込むように俯きながら、渋谷さんは問いかけてきた。
「大したことではありません。お嬢様が推薦しただけです」
「笑顔、とか言われなかった?」
30:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:00:23.06 ID:QXbKSZYO0
詳しく知らないが、自前の撮影用スタジオを社内に備える芸能事務所は、そう多くないのではと思う。
着いてみると、思いのほか大勢の人がいた。
被写体となるアイドルはほんの数人と思われるが、その十倍はいるであろうスタッフが辺りをせわしなく動き回っている。
想像していたほど、簡単なものではないらしい。予め確認できて良かったと思う。
31:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:03:46.64 ID:QXbKSZYO0
「ダー♪」
途端、先ほどまでのキリッとしたアナスタシアさんの表情がホロリと崩れ、まるで別人のようにあどけない笑顔を見せた。
ボーイッシュでクールな外見とのギャップがあまりに大きく、思わずドキッとしてしまう。
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