27:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:53:00.55 ID:QXbKSZYO0
それまで静かにソファーに腰掛けていた渋谷さんが、立ち上がった。
「二人が撮影してるの、スタジオ棟の2階でしょ」
「おっ? なんだなんだしぶりーん、抜け駆けは良くないぞー♪」
渋谷さんに何かとちょっかいを出したがる本田さんが、肘で彼女を小突く。
仲が良いな、この二人は。
しかし、どういう風の吹き回しだろうか?
私の見立てでは、渋谷さんはあまり、面倒事を率先して行うような人には見えなかった。
私の思い違いか。
「千夜も、手伝ってくれる?」
「えっ?」
渋谷さんが声を掛けた。
気のせいではない。彼女は、私の方を向いている。
「私、紅茶の美味しい淹れ方なんて分からないから」
淹れ方も何も――水筒に入れてあるものに、作法も何も無い。
本来であれば、ちゃんとした茶器で淹れたてをお出しするべきなのだが、ここにあるのは粗末なプラカップだけだ。
それはさておき、彼女には何か別の目的があるようだった。
「分かりました」
私は頷き、お皿を持つ彼女の後ろについて部屋を出た。
本田さんや三村さんもついてきたがっていたが、渋谷さんは断った。
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