28:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 21:54:29.89 ID:QXbKSZYO0
「……えぇと、千夜、さん?」
スタジオへ向かう途中、長い廊下を歩きながら、渋谷さんがこちらの機嫌を伺うように口を開いた。
しばらく無言の状態が続いており、彼女が先に根負けした形になる。
「千夜でいいですよ」
渋谷さんは、私が年上であることに一応の遠慮をしたらしい。
「それなら、千夜もそんな丁寧語じゃなくてもいいんだけど」
「私のことは、気にしないでください。癖のようなものです」
「まぁ、いいんだけどさ」
一つため息をついて、渋谷さんはお皿を持っていない方の手で頬を掻いた。
「ごめん、急に付き合わせて」
「私に、何か?」
渋谷さんは、年齢の割にとても冷静で、客観的な視野を持っている。
言葉を交わしたことは少ないが、何となく通ずるところを感じていて、密かに二人で話をするのが楽しみでもあった。
そんな彼女の方から私に声を掛けてきたので、内心少し動揺している。
「あ、いや……千夜も、あのプロデューサーにスカウトされたんだよね?」
「はい」
「その……なんて言って、スカウトされた?」
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