白雪千夜「足りすぎている」
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30:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:00:23.06 ID:QXbKSZYO0
 詳しく知らないが、自前の撮影用スタジオを社内に備える芸能事務所は、そう多くないのではと思う。

 着いてみると、思いのほか大勢の人がいた。
 被写体となるアイドルはほんの数人と思われるが、その十倍はいるであろうスタッフが辺りをせわしなく動き回っている。
 想像していたほど、簡単なものではないらしい。予め確認できて良かったと思う。

「あ、いた」

 渋谷さんが、その広々とした部屋の一角を指差した。
 背伸びして目を凝らすと、確かにアイツと、新田さん、そして――。


 ――アナスタシアさん、か。

 あまり話したことはない。
 おそらく普段着だと思われるが、カメラの前でポーズを取る彼女の顔は、ギリシャ彫刻のように端正だった。
 美しいものには、それだけで価値がある。彼女は、なるべくしてアイドルになったのだなと思う。


 渋谷さんがアイツに声を掛けて、一旦休憩を挟むことになった。

「ごめんね、邪魔をするつもりは無かったんだけど」
「ううん、そんなこと無いわよ。ありがとう、凜ちゃん、千夜ちゃん」

 嬉しそうに新田さんが駆け寄ってきて、ふと後ろを振り返る。

「アーニャちゃんも、こっち来て一緒に休憩しよう?」



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