31:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:03:46.64 ID:QXbKSZYO0
「ダー♪」
途端、先ほどまでのキリッとしたアナスタシアさんの表情がホロリと崩れ、まるで別人のようにあどけない笑顔を見せた。
ボーイッシュでクールな外見とのギャップがあまりに大きく、思わずドキッとしてしまう。
32:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:05:14.57 ID:QXbKSZYO0
何と言ったら良いのか――これも日本人的な感覚なのだろうか。
いたずらに卑屈を構えたつもりは無いが、正確に言い表そうとすると、言葉に迷う。
「もてなす側として、満足のいくものをお出しできないことは、少々後ろ暗い思いがするものなのです」
「ニェット、チヨ」
33:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:07:36.11 ID:QXbKSZYO0
「……そういう事を言われたのは、初めてです」
従者として仕える間、黒埼家の人達に感謝をされてこなかった訳ではない。
ただ、彼女がありがたいと言った私の行動は、私にとっては当たり前に思っていたものだった。
34:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:08:21.97 ID:QXbKSZYO0
「よく分かりましたね。お前の分は、用意がありません」
「ちょ、ちょっと千夜ちゃん!?」
新田さんと渋谷さんがなぜか狼狽える一方で、アナスタシアさんはクスクスと笑った。
35:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:09:37.87 ID:QXbKSZYO0
* * *
「チヨ、お水です」
休憩に入ると、いつもアナスタシアさんはクーラーボックスから給水を取り出し、私に手渡してくれる。
36:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:11:34.24 ID:QXbKSZYO0
日本人離れ、とは言うまいが――彼女はそのボーイッシュな美貌もさることながら、パフォーマンスも質実なものだった。
持って生まれた才能だけでなく、真面目にレッスンに取り組む中で着実に培われていったものだ。
極めて素直であり、純粋で真面目な心根であることが、そばにいるとよく分かる。
だが、彼女のアイドルに対するモチベーションは、どこから来るものなのか。
37:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:15:53.55 ID:QXbKSZYO0
――それもそうか。
確かに、私達は同じプロジェクトの仲間。立場は対等、だな。
「では、アーニャ」
38:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:17:56.20 ID:QXbKSZYO0
「出来ないことは、頑張ればいつか、出来るようになります。
出来るようになると、フヴァリーチ……褒めてもらえます。
小さい頃、パパとママはよく褒めてくれました。
パパとママ、離れていても、それを思い出せたら、寂しくないですね」
39:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:19:38.91 ID:QXbKSZYO0
「アーニャさん?」
訳も分からず手を引かれ、大鏡の前に二人並んで立つ。
こうして自分と比較すると、年齢の割に長身で均整な彼女のプロポーションが、より際だって見える。
40:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:22:52.41 ID:QXbKSZYO0
「それで? アーニャちゃんは千夜ちゃんに何を命令したの?」
その日の夜、私の部屋にはお嬢様ともう一人、アーニャさんが来ていた。
寮の食堂でお嬢様がアーニャさんを見つけ、この定期報告の場に彼女を招待したのだ。
41:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:24:20.40 ID:QXbKSZYO0
お嬢様は首を振った。
「むしろシンデレラプロジェクトの皆には、千夜ちゃんのこと、どんどん誘ってあげてほしいの。
色んなことをしてくれた方が、私も千夜ちゃんから色んなお話を聞けるからね」
301Res/285.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20