白雪千夜「足りすぎている」
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39:名無しNIPPER[saga]
2019/11/22(金) 22:19:38.91 ID:QXbKSZYO0
「アーニャさん?」

 訳も分からず手を引かれ、大鏡の前に二人並んで立つ。
 こうして自分と比較すると、年齢の割に長身で均整な彼女のプロポーションが、より際だって見える。

「私と、ゲームしましょう、チヨ。
 勝った方が、好きなこと、命令できます。
 ミクとリイナが、よくやっていること。アーニャも、やってみたいですね」

 合点した。
 確かに、前川さんと多田さんは、レッスン中にお互い勝負事を持ちかけているのを度々見かけたことがある。
 どっちが上手くいったか、どちらがトレーナーに怒られる回数が少なかったか。

 でもそれは、アーニャさんが意図していることとは少し意味合いが違う。
 前川さんと多田さんは、同じユニットを組む同士である一方で、ライバル同士というか――平たく言えば、犬猿の仲だ。
 ユニットの主導権をどちらが握るのかを競うために、勝負をしている。
 それは、ゲームなどという穏やかな響きのあるものではない。

「どうでしょう、チヨ?」


「分かりました」

 だが、これも戯れだ。
 それでアーニャさんが納得するのなら、勝ち負けなどどうでもいい。

 ニコリと笑ったアーニャさんの背後、入口の扉がガラッと開いて、トレーナーが入ってきた。



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