202:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:45:19.94 ID:1/ZkFkMM0
アーニャさんの瞳から、とうとう涙がこぼれ落ちた。
豊かな心を持つ彼女から、堪えきれずに地上に落ちる、温かな涙。
私のそれと、同じものとは思えない。
203:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:47:24.05 ID:1/ZkFkMM0
振り返れば、コイツがスカウトしていなければ、私達が再会することもなかった。
一歩を踏み出した先の可能性――思わぬ所で、得難き出会いがあったのだ。
「礼にはおよびません。
それに、まだ終わったわけではないのですから」
204:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:50:47.73 ID:1/ZkFkMM0
* * *
「1、2、3、4、1、2、3……!」
端っこに座り、三人のレッスンの様子をジッと見守る。
205:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:53:45.89 ID:1/ZkFkMM0
私は、体が空く時があればクローネのレッスンに参加させてもらえるよう、アイツに調整してもらった。
アーニャと一緒にいたいというのもあるが、単純に興味を持ったのだ。
理想のアイドル像と、それに至る道のりについて、常務がどのように考えているのかを。
206:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:59:38.65 ID:1/ZkFkMM0
最初こそ戸惑われたが、私のあの人に対する呼び方の変化も、今では皆に受け入れられてきている。
凜さんは、少し考える素振りを見せた後、どこかとぼけるように首を捻った。
「調子は、良いんじゃないかな。
どの程度の出来にまでなっているかは分からないけど、この前みたいに、倒れたって話は最近聞かないし」
207:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 19:02:23.14 ID:1/ZkFkMM0
そう言った後、慌てて手を振った。
「あ、いや、別に僻みとか羨ましいとか、そういうのじゃないよ?
私もずっと応援してるし、むしろ今ではちとせさん以外考えられないし。
とてもじゃないけど、私じゃ務まらないことを、弱音も吐かずにこれまでやり続けているの、すごいよ。でも」
208:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 19:06:40.21 ID:1/ZkFkMM0
皆の言う通りだと思う。
ランクという言葉があるように、アイドルには格というものがある。
常務は、イメージが崩れると言って許さなかったが、オーバーランクの曲を歌うなら、相応の格を有するアイドルが担うのが自然だ。
346プロで言えば、トップクラスの実力派として名高い高垣楓さんか、LiPPSのエースたるカリスマギャルこと城ヶ崎美嘉さん。
209:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 19:18:29.77 ID:1/ZkFkMM0
シャワーを浴びて、着替えて事務室に行くと、アイツは応接スペースのテーブルの上に資料を広げて待っていた。
脇には、サンプルを流すためと思われるノートパソコンも置いてある。
「白雪さんの新曲の候補を、三曲ほど絞ってまいりました。
どれが良いのか、白雪さんに決めていただきたいと思ったもので」
210:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 19:21:18.12 ID:1/ZkFkMM0
「分かりました。しかし、確認したいことがあります」
コイツの言うとおり、今度のフェスは、私にとってまず忘れられない大一番になるだろう。
そして、単なる思い出作りのために臨むものでもない。
211:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 19:24:03.68 ID:1/ZkFkMM0
少しの間が置かれた後、岩のような顔が少し柔らかくなった気がした。
「スカウトの際、あなたの笑顔を咲かせてほしいと、とある方にお願いをされました」
「ちとせさんが?」
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