180:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:30:25.54 ID:1/ZkFkMM0
そんな私の勝手な心配は余所に、アーニャさんは期待に胸を弾ませるようにウキウキとした声で話をする。
「ロシアでは、よくホームパーティーをします。
パパとママも、アーニャも大好きな人達、たくさん呼んで、みんな楽しいです。
今日も、チトセのホームパーティーに呼んでもらえて、とても嬉しいですね」
181:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:35:25.56 ID:1/ZkFkMM0
着席した私達の目の前に、料理が並ぶ。
と言っても、ワンプレートだけだ。スープも、ご飯やパンすらも無い。
「これだけかい?」
182:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:38:19.90 ID:1/ZkFkMM0
「お嬢様……申し訳ございません」
私は、膝の上に置いた手を握りしめ、俯いた。
183:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:40:37.39 ID:1/ZkFkMM0
「なぜって、決まってるでしょう?」
ガックリとした態度を見せてしまう私を尻目に、お嬢様は愉快そうに胸を張ってみせる。
「これが私の望んだことだもの」
184:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:42:56.70 ID:1/ZkFkMM0
「……解放?」
「黒埼家の従者という呪いからの、ね」
――それはつまり。
185:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:49:45.38 ID:1/ZkFkMM0
珍しく怒気のこもったお嬢様の声に、驚いて顔を上げた。
「同年代の友達がいなかった私に、北海道の白雪のおじさまとおばさまは、この屋敷へ遊びに来てくれる度に私を可愛がってくれたよ。
そして、その女の子も。
お庭に連れ出して、一緒にお花を摘んだり、落ち葉を投げ合ったり、夏は蝶々を捕まえて、冬は雪玉をたくさん作って、鼻の頭を真っ赤にして笑う子が、私は好きだった。
186:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:52:30.20 ID:1/ZkFkMM0
「私は黒埼家に拾われて幸せでした。
お察しの通り、私がアイドルを辞める決意をしたのは、お嬢様からアイドルを引き離すためです。
このまま無茶なレッスンを続けていては、お嬢様のお身体はいずれ壊れてしまいます。
私に生きがいを与えてくれたお嬢…」
「誰かに与えられる生きがいじゃなくて」
187:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:54:29.92 ID:1/ZkFkMM0
「……お嬢様」
「お嬢様、も止めよう?」
フフッ、と肩を震わせて、お嬢様は照れ臭そうに鼻をかいた。
188:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:56:51.78 ID:1/ZkFkMM0
「……まずいです」
「やっぱり?」
案の定ボソボソしている。玉ねぎどころか、つなぎに小麦粉もパン粉も入っていないのではないか。
ソースも、醤油を水で伸ばしたかのようなシャバシャバとボンヤリした味わいで、中途半端な塩味が見事に口当たりを邪魔している。
189:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 17:59:54.17 ID:1/ZkFkMM0
「白雪さんが、そのように思い詰めていたとは気づかず……申し訳ございません」
「いえ……私の方こそ、話をしませんでしたから」
コイツの慎重な運転で、暗い山道を下っていく。
190:名無しNIPPER[saga]
2019/11/23(土) 18:01:01.81 ID:1/ZkFkMM0
――私の誕生日、か。
アーニャさんも、時折こうして洒落たことを言う。
それなら――そうだ。
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